人と同じように猫もフケが出ます。フケは皮膚の新陳代謝の産物です。多少出る分には問題ありませんが、フケが多い場合は地肌のチェックが必要です。かさぶたがある場合は皮膚トラブルが考えられます。
異常なフケの見分け方や、フケの予防方法についてくわはら動物病院の桑原先生にお聞きしました。

1.猫にフケが発生する原因

フケは、皮膚の新陳代謝である「ターンオーバー」によってはがれ落ちた角質です。生理的な現象のひとつですが、急にフケの量が増えたり、執拗に掻いていたりする場合は、病気の可能性があります。

2.フケにも2種類?正常なフケと異常なフケの見分け方

愛猫のフケの原因と予防方法・対策について獣医師が解説
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

猫の皮膚のターンオーバーは3週間です。古くなった表皮が角質として皮膚からはがれ落ちてフケになります。黒や紺などの濃色の布や紙を敷いてブラッシングをしてみてください。案外たくさんのフケを回収できると思います。
いつもと同程度のフケは問題ありませんが、歩くだけで多量のフケが落ちてきたり、毛を掻き分けると毛の付け根にごっそりフケが溜まっていたりする場合は異常事態です。皮膚に異常はないか、執拗に掻いていないか、体調に変化はないかを注意深く観察し、かかりつけの動物病院で相談をしてください。

3.フケが発生する可能性のある病気とその症状

過剰なフケが出ている場合、皮膚トラブルも考えられますが、内臓疾患が隠れている場合も。地肌の異常はもちろんのこと、猫の行動や体調の変化にも注意が必要です。

内科疾患

多量のフケは皮膚の新陳代謝が変わったサインです。「この子は毛艶がいいね」という獣医師の一言は健康状態もバッチリだね、のコト。皮膚や被毛は栄養状態の鏡です。慢性腎臓病や慢性腸炎、糖尿病や副腎皮質機能亢進症があると、「多飲多尿」の症状だけではなく「毛艶が悪い」「フケが多い」「毛がベタベタ」などの症状がみられることもしばしば。お家での様子の変化をしっかり観察して、ありのままの姿を獣医師に伝えましょう。情報が多ければ多いほど、早期診断・早期治療・早期寛解につながります。

アレルギー性皮膚炎

アレルギーの原因は、食べ物に含まれるアレルゲン、猫用ベッドに使われている素材、ノミ、ダニ、花粉、ハウスダストなどさまざまです。
発症すると皮膚に湿疹や炎症が見られ、執拗になめたり、噛んだり、掻いたりするようになるでしょう。かゆみが強い場合は血がにじむほど掻きむしる場合も。掻いたところはかさぶたとなり、大量のフケが出ます。
治療方法は、検査でアレルゲンを特定し、猫の周りからアレルゲンを遠ざける方法が一般的。かゆみが強い場合は、抗生剤の投与で一時的にかゆみを抑えることもあります。

寄生虫による皮膚炎

ダニやノミが寄生して皮膚炎を発症することがあります。完全室内飼育でも飼い主さんが外から持ち込んだり、ペットホテルで寄生したりするケースがあるのでご注意ください。
代表的な寄生虫は、ネコショウセンコウヒゼンダニ、ツメダニ、イヌノミ、ネコノミ、ネコハジラミ。特に気を付けたいのが、強いかゆみを引き起こすネコショウセンコウヒゼンダニです。
いずれも駆除薬で治療できますが、寄生が判明したら猫が使っているものをすべて洗いましょう。ノミアレルギーやダニアレルギーを発症した場合は治療に時間がかかります。さらに、寄生虫は感染症を引き起こす可能性も。定期的に動物病院で相談の上予防薬を投与して、ノミ・ダニの寄生を防ぎましょう。

真菌による皮膚炎

真菌とはカビのことです。感染しても最初はそれほどかゆがりません。毛束が抜け落ち、円形に脱毛した様子から発症がわかる場合がほとんどです。小さな円形から脱毛部分が広がっていき、大量のフケが発生。全身に広がる前に治療が必要です。
真菌の治療には抗真菌薬を使います。飲むタイプと塗るタイプがありますが、飲むタイプは副作用の恐れがあるので、子猫やシニア猫は塗るタイプを使用するケースがほとんど。シャンプーに慣れている猫の場合は、薬用シャンプーで菌や感染した毛を洗い流す方法も効果的です。

4.病気以外でフケが増えてしまう原因は?

愛猫のフケの原因と予防方法・対策について獣医師が解説
(画像=『犬・猫のポータルサイトPEPPY(ペピイ)』より引用)

病気以外でフケが増える原因には次の5つが考えられます。

原因1.ケア不足/し過ぎ

ケガや口内炎で毛づくろいができない猫、シニアになって思うように体が動かない猫、肥満で背中に舌が届かない猫、あまり毛づくろいをしない猫はフケが目立ってきます。猫の手や口が届かない部位を中心に、飼い主さんがブラッシングでお手伝いしてあげましょう。
一方で、新陳代謝が活発になりすぎてフケが増えてしまうケースもあります。ブラッシングをしすぎて角質層が取れすぎてしまうと皮膚のターンオーバーのサイクルが早くなってしまいます。この場合、フケが多くなると同時に被毛も薄くなってきます。毛が薄くなってきたなー、という場合はブラッシングの間隔を開けてみても良いかもしれません。

原因2.乾燥

空気が乾燥している冬だけでなく、エアコンの風を受ける夏にもフケは増えやすくなります。人の肌と同じように、猫の皮膚は乾燥すると角質がはがれてフケになります。乾燥した皮膚は細菌や日光など外的刺激を受けやすくなるため、早めに保湿してあげましょう。

原因3.緊張・ストレス

緊張や興奮時は交感神経の働きが活性化して、毛が逆立ちます。毛が逆立つと古くなった角質も同時に起き上がってきて「さっきブラッシングしたばっかりなのに、もうフケが出てきちゃったー」ということになります。
一時的なものなので、蒸しタオルなどで優しく拭き取ってあげると元通りになります。ストレスにさらされ続けると、寝床に引きこもり、自身のグルーミングも怠りがちになります。

原因4.食事

市販されているフードは栄養バランスがとれているはずですが、「手作り食」だけを与えていたり、減量中に「減量用ではないフード」を与えていると、栄養バランスの偏りが生じて、皮膚の健康が保てなくなります。結果皮膚が乾燥したり、ターンオーバーのサイクルが乱れてフケが増えてしまいます。アレルギー体質の猫に、体質に合わない食事を与えてしまっている場合も同様です。

原因5.加齢

シニアになってくると皮脂の分泌が減るため、皮膚の水分が奪われ、乾燥してフケが出やすくなります。
シニア猫用の食事は、栄養素の吸収や抗酸化作用のある栄養素に配慮して設計されているためお勧めです。また、関節炎により体がこわばってしまって、今までできていたグルーミングができなくなってきます。筋肉量が減り、骨張ってくるため飼い主さんのグルーミングも嫌がるようになってしまう場合もあります。骨張った部位に硬い素材のブラシを当てたり、強くブラッシングをしたりしないようにしましょう。皮膚への刺激が少ないブラシを用いたり、あえてブラシを使わず、蒸しタオルやゴム手袋などでお手入れしてあげるのもシニア猫への優しさですね。