人前で緊張してうまく話せず、仕事が憂鬱…
試験や面接、会議、プレゼン、スピーチなど、私たちが人前で話す機会は結構多いもの。大勢の人の前では、誰しも緊張するものです。それでも、ある程度時間が経つとペースがつかめて、緊張感は程よく和らいでいくのがだいたいスタンダードな状態だと思います。
ところが、中には人前に出ると緊張しすぎて、心臓がドキドキ、声が震えたり裏返ったり、頭の中が真っ白になってしまったりして、どうしてもうまく話せないと悩んでいるあがり症タイプの人も多いものです。特に新入社員などは、自己紹介、研修、プレゼン、会議での発表など、大勢の前で発言する機会が否応なく増えて行くため、仕事に行くのが憂鬱になることもあるのではないでしょうか。
「とにかくあがり症で、人前でプレゼンするのがつらい。声は震えるし、血管は脈打って心臓が口から飛び出しそうになる。喋り始めてしばらくすると少しは落ち着きますが、終わった後は滝のような汗でワイシャツがびっしょり。プレゼンの日は着替え持参です」(28歳・営業)
「外部のスタッフも入れた全体会議で、端から順番に「自己紹介」をさせられるのが苦痛。自分の番が近づいてくると、緊張で気絶しそうになる。そうなったら何を喋ったらいいのか頭の中を整理することも不可能。明らかに挙動不審な感じになって心が折れそうになる」(27歳・IT)
「メールやSNSでの連絡に慣れていて、電話が超苦手です。周囲に人がたくさんいると緊張して上手く話せなくなる。いつもあらかじめ話すべきことをメモして、それを読む感じで必死に対応。でも、どうしても慣れなくて、最近は転職も考え始めています」(32歳・不動産)
そもそも人前で緊張するのはなぜ?
そもそも、人はなぜ緊張するのでしょうか。
人前で感じる緊張やあがりは、自律神経と大きな関わりがあるようです。
自律神経とは、体内の心拍数や心臓の収縮力、血圧や呼吸数、食物が消化管を通過する速度などの体内プロセスを調節する役目を持ち、「交感神経系」と「副交感神経系」に別れています。
緊張状態を作り出すのは「交感神経系」の役目です。例えば大勢の人の前で注目されると、不安やプレッシャーから「交感神経系」が活発になり、脳内ホルモンの一種である「ノルアドレナリン」がさかんに放出され始めます。その結果、自律神経のバランスが崩れて心拍数が上がり、血圧の上昇や筋肉の緊張、代謝速度アップなど、さまざまな「緊張」や「あがり」症状が出現するというわけ。
このことを医学用語では「交感神経の逃走反応」あるいは「闘争反応」と呼んでいるのだそうです。過度の緊張は、まさに「窮地に追い込まれている!」ということを知らせる緊急サインといっても過言ではないようですね。
(参考:MSDマニュアル家庭版 Steven A. Goldman , MD, PhD, University of Rochester Medical Center)
人前に出て緊張する人としない人はどこが違う?
それにしても、人前でも緊張することなくスピーチやプレゼンをやってのける人ってすごいですよね。緊張する人としない人は、一体何が違うんでしょうか。「人前で話すのに慣れている人」に話を聞いてみると、意外なことに「毎回、緊張はする」という人がほとんどでした。そして、場数を踏んで、経験値が上がれば緊張は自然に克服できるという意見も多く見られました。
「緊張は毎回していますよ。そもそも緊張しない人なんていないんじゃないですか? スピーチが上手い人は、単に場数を踏んでいるだけです。スピーチは慣れですよ」(43歳・学芸員)
「誰でも最初はガッチガチに緊張するものですよ。それは当然のことだから、全く気にしなくていいと思います。緊張しすぎてつらいのは、まだ経験値が浅いだけです。何回も挑戦しているうちに少しずつ自信が湧いてきて、人前でも適度な緊張感で話すことができるようになります」(34歳・建築)
「私も学生時代は人前ですごく緊張するタイプで、面接やスピーチは苦痛でした。でも、なんとか慣れたい一心で市民劇団に入ったり、町のイベントで案内役をさせてもらったり、ゆるく人前に出て経験を積むうちに克服できたという感じです。成果あって、新入社員の頃には結構堂々と話す度胸がついていたので、やって良かったなと思います」(41歳・ホテル)
人前で自信満々にスピーチやプレゼンをしている人も、舞台に上がればそれなりに緊張しているんだとわかるだけでも、親近感が湧いてきませんか。人前で緊張して話せない悩みは、経験値を上げることが一番の近道のようですね。