まるで別人……どんどん混乱していく夫
「夫に赤ちゃんの世話をしてもらうといつわめき出すか分からない、という状態に私も疲れてしまいました。次第に夫には何も頼まなくなり、夫も自主的には世話をしなくなりました」
そのうち、妻との接点を避けてなのか平日は深夜に帰り、土日は昼間から飲みに出かけるようになってしまったそう。
「お酒の量が増えて、夫の状態は悪化しました。酔っ払って帰って来ては『俺は早死にするから後は頼んだ!』『俺はもうこの人生を諦めてる。楽しいことなんか何もない』などと子どもの前でネガティブなことを言ったり、職場の人の悪口を言いながら『こ○してやる!』とつぶやいたりするので、だんだん怖くなってしまって。妊娠中はあれだけ子どもと会うのを楽しみにしていて、俺は本当に幸せだと毎日のように言っていたのに、どうしちゃったんだろうって」
英子さんの夫は、巷でよく聞く「子育てに参加してくれない夫」ではなく、「子育てに参加できずに苦しんでいる夫」でした。
「家庭内別居のような状態になって、これで子どもに夫の怒鳴り声を聞かせずに済むって、どこかほっとしていました。私も夫のために何をしてあげられるか、深く考えることができなくて……好ましくない状況を放置してしまいました」
夫に言ってしまった「ひと言」を大後悔
そんな風にして2ヶ月が経ったある日のことです。
「夫が酔っ払ってフラフラの状態で帰ってきて、手も洗わずに子どもを抱っこしようとしたんです。つい『待って触らないで!』と子どもを取り上げてしまいました。 しまった! と思い、とっさに『ごめん、とりあえず手を洗って、お水一杯飲んでちょっと落ち着いてから抱っこしてくれる?』と言い直しましたが、時すでに遅しでした」
夫の表情がこわばり、沈黙の後にこんな言葉が続きました。
「英子さえいなければ、俺と子どもだけだったらうまくやっていけるのに。お前がごちゃごちゃ言うから俺は子どもにも触れなくなった! 英子は子ども産んだらもう用済みなんだから、この家にいなくていいよ! 出ていけよ!」
真っ赤な顔でそう言って、目覚まし時計を壁に投げつけた夫さん。幸い投げたのは赤ちゃんがいない方角だったものの、プラスチックの破片や電池が部屋に飛び散りました。