3)養育費:家裁が定めた算定表で相場が決まる
続いての費用は「養育費」です。「養育費」とは、子どもが衣食住に困らず、きちんと学校に通えるような生活を行う上 で必要な費用のことです。
「子どもがいる夫婦が離婚した場合、どちらか片方が親権者として子どもを引き取ります。ふたりの間に産まれた子どもは、共に暮らさなかったとしても、父と母、両方に扶養する義務があります。そこで、引き取らなかったほうの親が『子どもの養育に要する費用』として、親権者である親に養育費を支払うのです」
ここで重要なのが、養育費はあくまで子どもを養育するために支払われる金銭であって、親の生活費として支払われる金銭ではないという点です。
「養育費の金額は、家庭裁判所が定めた養育費・婚姻費用算定表のとおり、支払う側と受け取る側の双方の収入を当てはめたものが相場になることが多いです。子どものためにも、支払い期限・支払い方法 ・毎月支払う金額などは明確に決めておきましょう。なお、ふたりの間で支払う金額などがきちんと決まった場合、できるだけ公正証書などの書面に残しておくほうが、後のトラブルを回避できます」
小さくて見えないと思うが、これが養育費算定表(子1人・0~14歳の表)
相手が養育費を支払わない場合は、法律的に取り立てられる
夫婦の間に生まれた大切な子どもの将来のために支払うお金である、「養育費」。ただ、離婚時に養育費を支払うと約束したとしても、約束どおりに支払われるとは限りません。養育費は、毎月払いで長期間にわたって支払われるため、支払う側の環境や気持ちの変化によっては、養育費の支払いが遅れたり、支払いを停止したりする元配偶者も、少なくありません。では、養育費の支払いに滞りがあった場合、どう対処したらいいのでしょうか?
「まずは、元配偶者に、『養育費が届いていない』という旨を、内容証明郵便などで通知して、催促しましょう。これでも効果がなければ、養育費の支払いを家庭裁判所の審判や調停で決めた場合は、家庭裁判所に履行勧告や履行命令を出してもらうように申し立てすることができます」
そこまで手順を踏んでも、元配偶者が勧告や命令に従ってくれない場合。そのときは、泣き寝入りするしかないのでしょうか?
「養育費の支払いを家庭裁判所の審判や調停で決めた場合、または、養育費の支払い について、公証人に作成してもらった公正証書があれば、給料や貯金・不動産といった相手の財産を差し押さえ、強制的に養育費を支払わせる『強制執行』を行うことができます。 夫の現在の勤務先、預金預け先、所有不動産が判明しない場合は、裁判所から夫に 財産を開示するよう命令してもらう財産開示制度、市町村や銀行、登記所から必要な情報を開示してもらう情報取得手続き制度もあります」