夫との離婚を考えたとき、避けて通れないのがお金の問題。「離婚はしたいけれども、先々の生活を考えるとなかなか離婚できない」と躊躇する声も多いはず。そこで、妻が知っておきたい法律をまとめた書籍『妻六法』の共著者で、弁護士である森元みのりさんに、仮に離婚した場合、妻がもらえる法的なお金について聞いてみました。
1)財産分与:請求する権利は、離婚後2年まで
パートナーと別れる選択をする前に、考えておきたいのがお金について。森元弁護によると、離婚を通じてカップル同士に発生するお金(離婚給付金)には主に3種類あります。
「まず、ひとつめが『財産分与』です。婚姻期間中に築いた財産は、夫婦の共有名義のものに限らず、どんな財産も、『夫婦の婚姻中に協力して築いた財産』としてみなされ、財産分与の対象に含まれます。仮に自分が専業主婦であったり、夫が専業主夫であったりしたとしても、この点は変わりません。夫が会社員として収入を得ているのは、妻が家事や育児を行い、夫をサポートしていたおかげ。よって、夫が収入を得ることができるのは、妻の協力があってこそだと考えられるため、婚姻期間中に得た財産は名義がどちらのものであれ、離婚に際してきちんと清算することが求められるのです」(森元弁護士、以下同)
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なお、その財産分与の割合は、原則的に夫も妻も互いに「2分の1」とされることが大半です。「貯金はすべて夫が押さえているから、離婚したら無一文になってしまう」と考えている人も、原則的には、夫婦の持つ資産は離婚後は原則半分ずつ分けることになるのだと、覚えておきましょう。
「財産分与の請求権は、離婚から2年以内に制限されています。相手が財産分与に 応じない場合、2年以内に調停の申し立てや訴訟の提起を行わないと、請求権を失ってしまうので注意しましょう」
2)慰謝料:50万~200万円が相場
そして、不倫やDVといった離婚の原因を作り出した配偶者が、もうひとりが負った精神的苦痛に対して支払うのが「慰謝料」です。
「裁判所で認められる一般的な金額の相場は、50万円から200万円ほどだと言われていますが、明確な規定はありません。芸能人や大富豪たちが、離婚時の慰謝料に何億円も払った……などのニュースが報道されることも多いので、慰謝料は高額なものだとイメージしがちですが、これはあくまで話し合いの末、お互いが納得した上での金額です。一般の離婚では、慰謝料はさほど高額にはならないのが通例です」
そして、慰謝料が払われるのは、あくまで不貞行為など、片一方が原因で離婚に至った場合のみ。
「『夫との会話がない』『夫の浪費癖がひどくて貯金をしてくれない』『趣味があわない』などは、夫婦の考え方の違いとみなされ、法律的には不法行為とは言えません。これらの理由が原因での離婚は、慰謝料が支払われないのでご注意ください」