地域活性化の一役を担う「関係人口」と呼ばれる人々。地域とどのような関わりを持ち、どういった影響をもたらすのでしょう。
この記事では、関係人口の定義や取り組みをおこなっている自治体についても紹介します。
関係人口とは
関係人口とは、地域に居住や移住をした「定住人口」ではなく、仕事や観光で地域を訪れた「交流人口」でもない、その地域に多様な関わりをもつ人々のことを指す言葉です。東京一極集中が進む現代において、地方では高齢化や人口減少が課題となっており、地域づくりの担い手の不足が叫ばれています。
こうした課題を解決する糸口として今注目されているのが関係人口であり、地域外の人材が地域づくりの担い手になることで、地方経済の活性化に繋がると期待されています。また、総務省では地方創生に向けた取り組みの一環として「関係人口ポータルサイト」を立ち上げ、各地方自治体のさまざまな取り組みや事例などを紹介するなど、行政レベルで関係人口の創出に力を入れています。
関係人口の定義
では、関係人口に該当するのは一体どのような人々なのでしょうか。関係人口の定義とは、二拠点居住をする人や地域に愛着やルーツがある人などが該当します。つまり、その地域に長年居住していなくても、愛着や思い入れ、情熱などがある人々が、この関係人口が指す「関係」に該当する人々だと認識すれば分かりやすいでしょう。
関係人口に該当する人々の地域への関わり方は様々ですが、兼業や副業など仕事絡みでの関わり方や地域行事やイベントの運営に参画して楽しまれる方もいらっしゃいます。いづれにしても、その地域に対して何らかの特別な思いや興味を持ち、親近感を持って関わる人々のことを関係人口と呼び、それは言い換えれば「ファン」と呼ぶこともできるでしょう。
交流人口や定住人口との違い
関係人口は、「観光以上・移住未満」という言葉で表現されることも多いですが、交流人口や定住人口との明確な違いはどこにあるのでしょうか。ここでは、それぞれの言葉の違いや関係人口との結びつきについてご紹介していきます。
交流人口との違い
交流人口とは、何らかの目的をもって一時的にその地域を訪れる人々のことです。ここでの目的は人によって様々ですが、観光やレジャー、通勤や通学、スポーツや習い事といったことが具合例として挙げられます。地方創生においては、主に観光目的の人々を指して用いられることが多いです。目的が達成されればその地域から離れてしまうため、関係人口と比較して地域との関わり具合が浅いと言えます。しかし、こうした観光で訪れたことをきっかけにして、地域のファンに繋がるケースもあるため、交流人口は関係人口の予備軍として考えることもできます。
定住人口との違い
定住人口とは、地域に居住や移住をした人々のことを指す言葉になります。別の言葉で「居住人口」と呼ばれることもありますが、その地域で実際に生活をする人々ですので、当然のことながら関係人口と比較すると地域への関わり具合は深いと言えます。
高齢化や人口減少が課題となっている地方からすれば、この定住人口を増やすことが最も効果的な対策とも言えますが、居住や移住するには心理的なハードルも高いため、多くの自治体が苦戦を強いられているのが現状です。そこで、定住人口よりも比較的ハードルの低い関係人口の創出を目指すことで、地域経済の活性化と将来的な定住人口の創出に期待する地方自治体が増えてきています。
関係人口が地方にもたらす影響
政府が発表した「まち・ひと・しごと創生基本方針2019」では、関係人口の創出と拡大がメインの取り組みとして位置付けられています。地方が抱える高齢化や人口減少といった課題を解決するためには、関係人口の創出と拡大が重要な鍵だと認識されているからです。では、関係人口が実際に地方にもたらす影響にはどういったメリットがあるのでしょうか。
地域経済の活性化
関係人口の創出によって、最も期待されることとして地域経済の活性化が挙げられます。多くの地域で課題となっている高齢化と人口の減少は、労働力不足や地場産業の担い手・後継者の不足に直結するため、地域経済の衰退に繋がるリスクとなっています。2021年に帝国データバンクから発表された「全国社長年齢分析」(※1)の調査結果によると、2020年における社長の平均年齢は60.1歳と過去最高年齢を記録したのと同時に、調査開始以来初の60歳超えを記録しています。
さらに、「全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)」(※2)においては、60歳以上の経営者のうち50%超が将来的な廃業を予定しており、このうち「後継者難」を理由とする廃業が約3割に迫ることも判明しています。こうしたなか、関係人口が地場産業に参入し新たな担い手となることで、労働力不足や後継者不足といった課題を解決に導き、結果的に地域経済の活性化に繋がることも期待されています。
(※1)参照:全国社長年齢分析
(※2)参照:全国企業「後継者不在率」動向調査(2021年)
体験や週末などの短期移住での発見を地域に活かす
関係人口の増加は、地域に新たな事業やアイデアが創出されるというメリットも生み出します。平日は都心で会社員として働きながら、週末や休日などを利用して愛着のある地域の課題発見やそれらの課題を解決する担い手として参画する関係人口を増やすことで、新たな知見やスキルを持った人々が地域に集まり、地域の新たな事業やアイデアの創出に繋がります。
自治体によっては、「インキュベーション」と呼ばれる新たな事業の創出や起業を支援するサービスや活動を積極的におこなっているところもあり、インキュベーションオフィスと呼ばれる起業したい若者を支援する施設を設立する自治体も近年では増えてきています。