喧嘩シーンのため、キックボクシングで鍛えた
――役作りはどのようにしましたか?
佐藤:海星は、朴訥(ぼくとつ)で不器用で素直なキャラクターです。それがすごく響いたので、すんなり役に入れました。喧嘩のアクションシーンがあるので、趣味のキックボクシングで鍛えたりはしましたが、何かを演じようと言うより、僕が原作を読んで思った素直な感動を伝えようと思いながら演じました。
――Yuki Saito監督からは、どんなアドバイスがありましたか?
佐藤:原作を読んで感動したことを監督にお話すると、監督がそれ以上言葉にして何かを仰ることはなかったです。監督にはそんな僕の演技を自然に撮っていただきました。
温かな距離で描かれる家族関係
――本作では、家族関係の葛藤が描かれていますが、回想場面では家族の団欒が温かな雰囲気でした。加藤雅也さんと大塚寧々さんとの共演はいかがでしたか?
佐藤:父と母と息子という設定で、加藤さんも大塚さんも初めから優しい雰囲気で包んでくださる方達でした。少ない家族のシーンも、映画の中で印象づけたいなと思いました。当たり前の幸せな家庭に育ってたんだってことを、海星もそうだし、自分自身もそうだし、映画の中のひとつのシーンとしても大事にしたかったんです。
――大塚さんとのやり取りは、非常にぐっとくる場面が多かったです。
佐藤:身近な人が亡くなる感覚を持つとその時を大事にしようという感覚を持つと思うんです。それは大塚さんとのシーンで心掛けていました。わずかしかなかったんですが、そのシーンひとつひとつ、まだ生きている母の姿を自分は一生覚えていようというつもりで現場にいようと思いました。