私が孤独死現場でみた“遺族の姿”

<後編>脳死状態になることも…自殺を考える人に“もう一度だけ”あがいてみてほしい理由<yuzuka×よしむら香月>/2021人気記事BEST5
(画像=『女子SPA!』より引用)

筆者・yuzuka

yuzuka:そうですか……。実は私、今、特殊清掃の現場に密着で取材を行っているんです。実際に孤独死のあった現場に出て、清掃のお手伝いもさせていただいています。

 孤独死の現場に行ったときに感じるのは、圧倒的な孤独感です。部屋も荒れていて、生前に孤独だったことが空気で分かったりすることがあります。それと同時に、ご家族から冷たい対応を取られることも多い。

 つい最近も、あるアパートのお部屋で孤独死がありました。だけど、すでに腐敗臭もすごいのに、ご遺族が清掃に関するお金を負担したくなくて、そのまま何ヶ月も掃除ができず、対応が宙ぶらりんになっています。今頃そのお部屋は、何ヶ月も血やハエ、ゴキブリまみれだと思います。

 そういうお部屋のお話を聞いたり、出会ったりすると、「一人で死ぬ以外に、方法がなかったのかもしれない」と思うときがあります。もちろん死因は自殺に限りませんが、孤独を肌で感じるんです……。

 だけどよしむらさんのお話をきくと、やっぱり入院されている方たちの中には、生前にもご家族やご友人の愛が確かに存在した方もいると思うんです。それに気づいていたけれどこのような結果になってしまったのか、それとも気づけなかったのか、なんだか、すごく切ない気持ちになりますよね。

「自殺を実行すべきじゃなかった」とは、言えない

よしむら:学校のいじめなどに巻き込まれて自分から命を絶つという選択に至った、という方もいると推察します。僕は基本的に、自分の意見を相手に押し付けたくないです。「自殺を実行するべきじゃなかった」とは、言えない。どういった結果であれ、そこに至るまでのその人の気持ちがあったと思うから。きっとその人には自死以外に方法がなかったのかもしれないですよね。

 ただ……。脳症というかたちで寝たきりになってしまった患者さんの中には、 「ずっと意識があった」という方もいらっしゃいます。意識がある状態の中で、目も開けられず、何もできない状態になってしまう。辛い状況から抜け出したくて自死を選んだのに、客観的に見るともっと辛いだろうと思う状況で、そのまま生き続けなければならない患者さんを見ていると、きっとこの方は、こんな状況になるなんて知らなかったんじゃないかなって、どうしても思ってしまうんです。

<後編>脳死状態になることも…自殺を考える人に“もう一度だけ”あがいてみてほしい理由<yuzuka×よしむら香月>/2021人気記事BEST5
(画像=『女子SPA!』より引用)

『自殺を考えている人へ』(よしむら香月)より

 だからこそ、あの漫画を描きました。もちろんそれを、どう受け取られるかは分かりません。僕の作品がきっかけで自殺を止める人もいるかもしれないし反対に、確実に死ねるようにしようと思う人もいるかもしれない。だけど僕は、僕が見たありのままの事実を伝えるべきだと思ったんです。

yuzuka:作品への反響は大きかったですか?

よしむら:そうですね。 今回の作品を投稿した際には、肯定的な意見以外にも、否定的な意見もありました。「寝たきりになることなんて知っている! それでも死にたいんだ!」というような意見も多かった。僕はすべてに目を通していますし、どの意見も否定しません。

 だけど「寝たきりでもいいんだ」と話す人と実際に話してみると、その人の頭の中にあるのは、ドラマで見た綺麗な寝たきりの患者さんの姿だったりするんです。僕も介護士として働く前は、「寝たきり」がどういう状態かなんて、知らなかった。だけど今では分かるから、やっぱり伝えるべきだと思っています。

yuzuka:寝たきりってしんどいよ、とか、孤独死の現場ってこうなんだよ、とか。そういうのって言葉で伝えてもなかなか限界があって……。だから私はできるだけ取材にいって、自分自身も現場を体験して、さらに写真を撮って伝えようというのを心がけています。そうでなければ伝わらないと思っていて。

 だからこそ、よしむらさんはイラストを使って伝えられるところが素晴らしいと思っています。私はそこに現実がある限り、伝える人が必要だと思っているけれど、グロテスクなものは見たくないという人もいますからね……。だけど写真が難しくても、よしむらさんの絵なら見られる、という人は多いと思うんです。