2020年、日本の自殺者数は11年ぶりに上昇し、前年を上回る2万1081人になった(4.5%増)。男性は前年より23人減ったのに対して、女性は935人も増えて7026人が自ら命を絶った。
※イメージです
コロナの影響や、著名人の相次ぐ自殺も原因となっていると見られている。これは、異常事態である。まだ希望を持つべき人たちが、次々に命を絶っていく。厚生労働省は、「自殺はその多くが追い込まれた末の死だ」と、言い切った。
Twitterで漫画『自殺を考えている人へ』が話題に
私は普段から、精神科で看護師として働いていた経験と、自分自身が自殺未遂をした当事者であるという目線から、自殺防止の啓発活動を行なっている。今回の企画では、この「自殺」について、さまざまな視点から掘り下げる。
今回は「自殺を図ったが死に切れなかった人はどうなるのか」という部分について、実際に終末期の病棟で介護士をしながら、漫画家として活動をしているよしむら香月さん(@tuki_no_kodomo)と対談した。対談のきっかけは、彼がツイートした『自殺を考えている人へ』という4ページの漫画だ。
「最近、ウチの病院に入院される方で若い患者さんが増えています。大体14、15歳くらいの思春期が多く、皆、意識がありません。つまりいわゆる植物人間。彼らは皆、自殺失敗者です」
と始まるこの漫画では、自殺を図ったが死に切れず、一生残る後遺症を負ってしまったり、脳死状態になってしまった人の、実状が描かれています。この漫画でよしむらさんは、「考え方やそれに伴う選択肢は十人十色」としながらも、「自損行為にはリスクを伴うことも知っていただきたい」と呼びかけています。
『自殺を考えている人へ』(提供:よしむら香月さん)※画像をタップすると次の画像が見られます
1コマ目は2018年度の「自殺で亡くなった人数」(警察庁発表)と「自損(自傷)行為による救急搬送人数」(消防庁発表)をもとによしむらさんが概算したグラフ
面会で“明るく振る舞う”家族の姿
よしむら香月さん
「自殺を図ったが死に切れなかった人がどうなるのか」を聞いた前回に引き続き、今回は、「自殺を図った人の家族や、自死遺族のこと」、そして、自殺を考えている人に伝えたいことについて、2人で語り合った。
yuzuka:漫画に描かれていた、自殺を図ったことで寝たきりになってしまった患者さんの面会に来られた、ご家族の表情が印象的でした。
どこか楽しそうというか、笑顔だったのが意外で…… 。何か意図を持って描かれたのでしょうか?
『自殺を考えている人へ』(よしむら香月)より
よしむら香月さん(以下、よしむら):はい。実際に家族の方で、こういう方が多かったというのを表現しました。当たり前ですが、状況的にはご家族はものすごく辛いんですよね。だけど目の前にいる患者さんに、辛い顔を見せようとしない姿勢を感じるんです。
実際に、いつも楽しそうに思い出を語られている方が多いのが印象に残っています。おそらくその楽しい雰囲気をベッドに寝ている本人たちに伝えようとしているのかなと思います。もちろん想像の範疇ですが。
yuzuka:辛いですね……。ちなみに面会される方は多いのでしょうか。
よしむら:はい。 他の原因で入院されている患者さんたちと比べると自殺がきっかけで入院された患者さんは、圧倒的に面会が多いです。ご家族だったり、お友達だったりですね。ほとんど毎日いらっしゃる方もいますね。