「風景を撮ってみたものの、思ったような写真にならない」
という悩みを抱える人は少なくありません。確かに、一眼レフやミラーレスカメラは設定項目も多く戸惑ってしまうこともありますよね。でも、初心者でも簡単にきれいな写真を撮ることは可能なんです!今回は、風景を撮る際のポイントをわかりやすく紹介します。
[講師]Tolanca(トランカ)編集部
風景写真をうまく撮影するコツ
風景写真の撮影は決して難しくはありません。ちょっとしたコツを押さえるだけで、キレイな写真を撮ることは可能です。「うまく撮影できるようになりたい!」と思っている人は、ぜひ試してみてください。
撮影モードは「絞り優先オート」に設定
一眼レフカメラにはさまざまな撮影モードがありますが、初心者の風景写真撮影には「絞り優先オート」設定がおすすめです。
・絞り優先オートとは…?
F値をコントロールできる撮影モードです。レンズを通る光の量を示すF値は「絞り値」とも呼ばれ、「背景をぼかしたい」「ピントを広く合わせたい」といった撮影シーンで使います。
この「絞り優先オート」設定を行うことで、絞り値のコントロールが可能となり、被写界深度(ピントの合っている範囲)を調整できます。キレイな風景写真を撮るためには、全体的にピントを合わせることが手っ取り早く、絞り値をできるだけ絞って撮影する方法がおすすめです。ピントが合う奥行きを広く設定することで、いつもの風景を撮影してもグンとシャープな印象に。色の濃淡もしっかりと表現されるため、風景写真にはぴったりです。
・設定は被写体によって使い分けるのがおすすめ!
絞り込むこと(F値を大きくすること)による注意点もあります。たとえば、絞り込めば絞り込むほどシャッター速度は遅くなります。特に、ISO感度を低く設定している場合はブレやすくなるため、カメラをしっかりと固定するのがおすすめです。また、川や海など動きがある風景を撮影したい場合は、「シャッター速度優先オート」が最適です。絞り優先オートでは流動感がなく、のっぺりとした写真になってしまうため、山や花など色合いを強調したい風景撮影のときは「絞り優先オート」、川や海など動きを強調したい風景撮影のときは「シャッター速度優先オート」と使い分けてみてください。
ホワイトバランスの設定
ホワイトバランスとは、カメラで光源に合わせて色を補正する機能です。たとえば、同じ白色を撮影しても、暖色の照明の下と太陽の下では、色の表現され方は異なります。設定無しだと電球光では黄色っぽく、太陽光では青白くなります。よって、できるだけ元の白の色味を表現できるよう、初期設定では「オートホワイトバランス(AWB)」がオンになっているケースがほとんどです。このオートホワイトバランス設定は風景写真を撮影する場合はあまり向いていません。カメラ側で自動的に補正されてしまい、微妙な色表現が失われてしまうケースがあるんです。
そこで、キレイな風景写真を撮りたいのであれば「太陽光」設定に変更するのがおすすめです。特に、日の出や夕焼けといったダイナミックな色合いを表現したい場合は、太陽光設定にすることで、イメージに近い写真を撮れます。
仕上がり設定
写真の仕上がり具合を変化させられる「仕上がり設定」はメーカーによって名称が異なります。
具体的には、
・キヤノン:「ピクチャースタイル」
・ニコン:「ピクチャーコントロール」
・ソニー:「クリエイティブスタイル」
・富士:「フイルムシミュレーション」
・オリンパス:「ピクチャーモード」
の名称です。仕上がり設定には、いくつかのプリセットが用意されており、撮影シーンに合わせて変更します。たとえば、キヤノンのEOSシリーズのプリセットは「オート」「スタンダード」「ポートレート」「風景」「ディテール重視」「ニュートラル」「忠実設定」「モノクロ」の8つです。
注意点として、「オート」や「スタンダード」で、風景写真を撮るには若干メリハリに欠ける場合があります。オートで単調な写真になりがちな自然風景は「風景」「ディテール重視」設定で撮影すると鮮やかでキレイに撮影できるでしょう。
露出補正
絞りやシャッタースピードを調整しても思い通りの写真にならないとき、活躍するのが「露出補正」です。露出補正をマスターすると、撮影レベルが格段にあがり、中級者のようなキレイな風景写真が撮れます。
露出補正は、一般的に白い被写体を撮影する場合はプラス、黒い被写体を撮影する場合はマイナスに補正をします。露出補正はEVと呼ばれる明るさの単位で表されており、±0EVが露出補正を行っていない状態です。一眼レフは適正と判断した明るさでオート撮影しますが、「明るくなりすぎた」「暗くなりすぎた」と感じた場合は、この露光補正でお好みの明るさに調整が可能です。
雪山のような白が強く出やすい風景や、荒海のような黒が強く出やすい風景のときに設定すると、イメージに近い写真を撮影できます。露光補正は液晶を見ながら微調整するので、撮影場所によっては液晶が見づらい可能性があります。そのため、いくつかのEVパターンで撮影しておくと後から見返したとき安心です。±1EVだと変化が大きすぎるため、基準となる写真の±0.3EV程度で小刻みに調整をしましょう。
三脚/C-PLフィルター
風景写真をキレイに撮影するには、三脚やC-PLフィルターがあるとより便利です。たとえば、滝の流れを表現するには2分の1秒以下のシャッター速度にする必要があるため、三脚は必須です。三脚を使用することで、ブレを防ぐことはもちろん、シャッター速度を落としても正確に写真を撮影できます。ただし、三脚の使用を禁止する場所も増えているので注意が必要。もし三脚が使えない場合は、石やベンチといったカメラを固定できる場所を探すなど、工夫してみましょう。
また、色の濃淡の変化が単調だと感じる場合は、C-PLフィルターの使用がおすすめです。C-PLフィルターは別名「偏光フィルター」とも呼ばれ、コントラストを高めたり、不要な反射を軽減する効果があります。これがあるだけで簡単にキレイな風景写真が撮れてしまう初心者にはもってこいの一押しアイテムです。
光線を知る
「逆光」という言葉は広く知られているのでご存知の方が多いのではないでしょうか。この「逆光」に加え、一眼レフで撮影する場合は「順光」や「サイド光」も意識してみましょう。
「順光」とは被写体に対してカメラ側から当たる光、「サイド光」とは被写体に対して側面から当たる光、「逆光」とは被写体に対して背後から当たる光を指します。被写体に対してどのような角度で光が当たっているかを考えるだけで、写真の印象は大きく変わります。たとえば、一般的に悪い写真の代名詞ともいえる逆光も、風景とのバランスによってはアンニュイな個性あふれる仕上がりになるでしょう。撮りたい風景が決まったら、光線を変えて撮影してみると、思いがけずすてきな写真が撮影できるかもしれませんよ。
風景写真の撮影で必要な性能
繊細かつドラマチックな風景写真を撮影するためにはカメラにこだわることも大切です。ここでは、キレイな風景写真を撮影するために必要な性能を紹介します。
画質
画質と一口にいっても、そこにはさまざまな要素が含まれます。中でも、画素数やイメージセンサー、画像処理エンジンは高画質を実現する上で非常に重要な観点です。最新のものはどんどん高性能になっているので、チェックしてみましょう。
ダイナミックレンジ
ダイナミックレンジとは、写真内に記録できる情報の最小から最大までの幅を示します。ダイナミックレンジの幅が広いほど、黒くつぶれたように見える部分にも光の情報が残っているため、編集などで明るく調節しても生きている可能性は高まります。
しかしダイナミックレンジの幅が狭い場合は、空など明るい場所は白く飛んでしまい、 黒くつぶれた場所は編集すらできない場合がほとんどなので覚えておくと便利です。ダイナミックレンジの幅は、センサーサイズも大きく影響するため上位モデルでよく採用されている「フルサイズセンサー」が風景写真には向いているでしょう。