実験結果の発表について社内で議論があった

――……下世話な話ですが、他社さんで「踊り炊き」を推しているところ、この発表はかなり勇気が必要だったのでは……? 河阪さん 「あぁ……確かに、この実験結果の発表に対して社内で議論はありました。お客様もかまど炊きのご飯は踊っていると思っている可能性が高いので、『偽物なのではないか』とか『おいしくなさそう』と思われてしまうリスクも考えられますし。 でも私たちのライバルは他社製品や世論ではなく、あくまで『かまど』。かまど炊きのご飯に近づけるという闘いなんです。そこに対して自分たちの研究に自信がありましたので、まさにガリレオガリレイのように『それでもお米は踊っていない』と、新発見の痛みを負うことにしました(笑)」

――なんと、研究して悩んだ末の発表だったのですね……! いつの時代も、新事実を発表するときはリスクが伴いますが、SNSで広まったということは、この実験に対して興味を示した人が多かったということでしょう。この発表が、炊飯器に対する常識を変えた歴史的瞬間だったのかもしれませんね。

「踊らない」がかまど炊きご飯のおいしさのヒント

――かまど炊きのご飯を目指されているとのことですが、かまど炊きご飯とはどんな特長があるのでしょうか? 河阪さん 「かまど炊きのご飯は、粒立ちがよくのど越しがいいのが特長です。一粒一粒がしっかりしていて嚙み応えがあり、噛めば噛むほど甘くなります。

仰天!「かまど炊きの米は踊っていない」実験結果を発表したアイリスオーヤマを直撃
(画像=『女子SPA!』より引用)

かまど炊きのご飯に極限まで近づけた「瞬熱真空釜IHジャー炊飯器」で炊飯したお米

今の主流となっている圧力IH炊飯器で炊いたご飯は、圧力で米のでんぷんがにじみ出てくるので、柔らかめでもちもちしています。

仰天!「かまど炊きの米は踊っていない」実験結果を発表したアイリスオーヤマを直撃
(画像=『女子SPA!』より引用)

他社の大火力炊飯器で炊飯したお米

どちらが良い、というのは好みにもよりますが、かまど炊きのご飯は高級な料亭などで出てくる、いわゆる『銀シャリ』というつややかなご飯をイメージしていただければと思います」 ――たしかに、おいしそうですね……! あ、もしかしてこのかまど炊きご飯の特長は「踊らない」というところにヒントがあったのでしょうか? 河阪さん 「そうなんです。対流しないからお米同士がぶつからず、傷がつきにくい。だからツヤのある粒立ったご飯ができるんです」 ――なるほど! ではやはりお米が踊らないようにすることが、かまど炊きご飯に近づけるヒントだったわけですね。 河阪さん 「はい、踊らないようにする研究がとても苦労しました。そもそもなぜかまど炊きのお米は踊らないかというと、かまど炊きの場合は炎が羽釜全体を覆って、中の水が均一に加熱されるから。 通常の炊飯器だと、IHによるヒーターの部分だけ熱されるため、釜の底の部分の水だけが熱くなり、その温度のムラによって対流してしまいます。だからかまど炊きのご飯を再現するためには、炊飯器の釜の中の水全体を均一の温度にする必要があったんです。その技術を開発するのがとても大変でした」 アイリスオーヤマの新商品開発は、「スピード開発」が基本のところ、この技術の開発には約2年も費やしたのだとか! ところが、かまど炊きのご飯に極限まで近づけるための技術は社内にあったそうなのです。