毎レース後に結果を分析し、「次回はこの直線で速めたほうがいい」「怯えの強い馬なので、ポジションを前にとれば速く走ってくれるのでは」など、改善点を調教師に相談します。馬は大変繊細な生き物で、細かい要因ひとつで走りが左右されるので、毎回試行錯誤の繰り返しです。

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

早朝5時から始まる朝の調教

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

厩舎

外国人初G1制覇…フェアなプレーで頭角

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

最近は競技の結果も含めて周囲の信頼を得られ、ありがたいことに、毎週18レースあるうち8~9割は騎乗させてもらっています。予定は韓国語の通訳さんが窓口になって調整してくれます。

韓国を代表するベテランの調教師にもずっと目をかけてもらっており、2012年のグランプリ、2013年のコリアンダービーと、重賞と呼ばれる大きなレースは全て彼の馬で勝利することができました。

最も印象に残っているのは、グランプリでの勝利です。当時は妻と生まれたばかりの息子と離れて単身で韓国に来ており、心の中で家族に「やったぞー!」と叫びました。G1レース制覇は僕自身初めてで、また外国人騎手初の快挙ということで、日韓のメディアにも取りあげられました。

一方で毎週の競技で勝ちを重ねていくのもやりがいを感じます。ファンや、馬を手塩にかけて育てているスタッフが喜ぶ姿は励みになりますね。2013年末に、競馬に関わる2つの賞をいただきました。釜山慶南競馬公園の「フェアプレー騎手賞」、そして競馬ファンが選ぶ「今年最高の人気賞」です。
フェアプレー騎手賞をいただけたのは、2013年の約470戦中、一度も制裁を受けなかったためです。レースは当然駆け引きもあり、特に人気馬に乗ると、他ジョッキーからのマークもきつくなります。しかし僕はラフなプレーで勝ちを目指すよりも、常に公正な試合がしたい。それが賞という形で認められ、とても嬉しかったです。

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

競馬場に足を運ぶ競馬ファン
人気賞をもらえた理由はわかりませんが、他の外国人騎手とファン交流会を行なった際に聞いた「一生懸命な騎手が好き」という声が印象的でした。騎手は負けを味わうことが多い職業です。勝てないとなっても諦めるのではなく、いかに努力して上位に食いこむか。

そうした工夫のひとつひとつを見られているのではないかと感じました。韓国では今も競馬はギャンブルだという認識が強いように感じます。しかし交流会では30~40代の男女が集まってくれ、今後は韓国の競馬もファン層が広がっていくのではないかと思っています。

家族との時間がレースでの自信に

現在は妻と1歳になる息子も一緒に住んでおり、時間ができたら外出するようにしています。家族と過ごす時間はなかなかとれませんが、先日は休暇を利用して釜山近郊の統営(トンヨン)などへ出かけ、心身ともにリフレッシュできました。

騎手は不確実性が高くプレッシャーも大きい仕事のため、パフォーマンスを上げるには精神的な支えも不可欠です。その意味でも、家族の存在には本当に感謝しています。普段は体調管理や毎日のルーティンを徹底して競馬に集中し、オフはリフレッシュした時間を過ごす。そうしたメリハリにより安定をはかることが、僕のレースでの自信につながっていると思います。

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

釜山の主要観光地は大体でかけたそう(写真は太宗台)

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

チムジルバンもお気に入りのリフレッシュ先

日本の免許取得も目標に、視野は常に世界へ

韓国の短期免許はいったん2014年3月末で切れますが、更新ができれば向こう1年間は引き続き釜山で仕事をしたいと考えています。2013年は釜山の騎手成績ランキング2位まで上りつめたので、今年は韓国で1位を目指すのが目下の目標です。

第77回~藤井勘一郎さん(競馬騎手)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

やはりいつかは日本の中央競馬でプレーしたいです。これまで日本の騎手試験を2回受けましたが、いずれも不合格でした。試験は座学の勉強も多く大変ですが、自分への挑戦と考えてチャレンジし続けるつもりです。

一方で騎手という職業は、その国でのライセンスと実力さえあれば各地に活躍の場があるので、機会があれば色々な国に行きたい気持ちもあります。来年以降は子育てを兼ねて再度オーストラリアに行くことも計画しています。海外でプレーするのは楽しさと大変さとが半分ずつですが(笑)、毎日やるべきことを積み重ねながら、自分が常に楽しいと思える方向に気持ちを高めていけたらいいですね。

インタビューを終えて・・・

取材の冒頭で、自らを「1人のビジネスマン」と表現した藤井さん。騎手という仕事に対するプロフェッショナルな姿勢と、競争の激しい世界を切りひらいてきた自信感が伝わってきました。真摯に練習に取りくみながら、明るい表情で周囲を配慮する姿から感じられたのは、彼のしなやかな強さ。今後もますますの活躍が期待される藤井さんに、みなさんもぜひ競馬場でエールを送っていただけたらと思います。

藤井騎手のレースを観にいこう!

韓国にはレッツランパークソウル、レッツランパーク釜山慶南、済州競馬公園の3つの競馬場があります。藤井騎手が活躍する釜山慶南競馬公園は、毎週金曜と日曜に競馬が開催。広い敷地内に植物庭園やアトラクションもあり、家族の行楽地としても人気のスポットです。釜山西部に位置、地下鉄駅からは距離があるのでバスかタクシーの利用が便利です。


提供・韓国旅行コネスト

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