―女子SPA!編集部・黒塩の誰得むかし話―
写真はイメージです(以下同じ)
中高一貫して、病的なまでに男子が苦手だった。 小学校までは男女問わず普通に仲良くしていたはずだが、どうやら赤い実のはじけどころが悪かったらしい。セーラー服を着始めた途端に、私の「思春期」はこじれ出した。通学路で同級生の男子を見かければルート変更したし、男子とは業務連絡ですら教師か女子生徒を間に挟んでいた。冷や汗ダラダラになり、まともに会話できなかったからだ。
「カースト上位の人たち」から身を隠す毎日
「スクールカースト」という言葉は大人になってから知ったが、間違いなく10代の私はその底辺にいた。男の子も、華やかな女の子も、私のような人間が口をきいてはいけない、雲の上の存在。彼らと目を合わせないように、教室の隅で気配を消していた。 そんなステルスゲーム(1)のような学校生活に疲れてなのか、途中から二次元の世界にハマった。持て余していた休み時間は、ラノベ(2)を読んで、ノートを隠しながらこそこそ絵を描くのが定番。当時の私はよく「等しく滅びを与えんことを……」と独りで暗唱していた。ラノベに登場する呪文である。おかげでオタクの仲間はできた。 1 ステルスゲーム:敵に見つからないよう隠れて行動することを目的としたゲーム 2 ラノベ:ライトノベルの略。SFやファンタジーなどを軽い文体で書いた小説 中高で青春をスキップしてしまった私の生き甲斐は、学問に精を出して成績を上げることだった。「男子が怖いから」という理由で塾にも通えず、教科書と「進○ゼミ」で勉強した。学校生活で嬉しかった思い出といえば、定期テストで数え切れないほど体験した「ゼミでやった問題だ!」くらいか。
進学で上京。“私なんか”の居場所はあるんだろうか
ガリ勉の甲斐あって、志望していた都内の大学に合格した私。入学を控えた高3の春休み、ある大切なことに気がついた。 受験勉強に必死で考えたことがなかったが、これからは、テレビの中でしか見たことのない「東京」で暮らすことになるのだ。田舎の教室にすら居場所のなかった私が。 「地味にしてたら変に目立って、都会のヤツらにいじめられるのでは?」 ただただ大学で浮きたくないという一心で、雑誌を読みあさり、服を買い、メイクを勉強し、髪を染めた。それまで校則を守ってノーメイクを貫き、放課後は制服か学校指定ジャージを着ていた私が、いきなり派手な女子大生になった。知り合いが誰も見ていないというのは、人を大胆にする。 今になって当時の写真を見返すと、いかにも付け焼き刃で、田舎者丸出しの派手さで恥ずかしくなるが、写真の中の私はとっても満足げで幸せそうだ。