同時通訳の仕事というのは、ものすごい集中力が求められます。座り仕事なのに、頭はフル回転。聞こえてきた単語を頭の中で解釈し、それを目的言語に一瞬で訳していきます。迷おうものなら、どんどん置いてけぼりになるのですよね。たとえば、

「さっきfootballって言ったよね?『サッカー』で良いよね?あれ、それとも『アメフト』?映像がないけどどっち?どっちなのぉ~?」

という具合。こうした「迷い」をコンマ数秒の瞬間に頭の中で描きつつ、

「ええいっ!迷っていたって始まらない。ここは『サッカー』で行こう!」

と、自分にとっての言いやすい単語で見切り発車。「サッカー」と「アメフト」ということば、ぜひここで皆さんに音読して頂きたいのですが、「サッカー」の方が、2音節で済みますよね。「アメフト」は口や唇を4回ぐらい上下左右に動かす感じです。大変です。

・・・と、たったそれだけの理由で(もちろん文脈からも十分吟味した上で)「サッカー」と同時通訳するも、後で話の流れで振り返ってみたら「アメフト」のことだった、ということはザラです。

「話者がイギリス人だったし、てっきりサッカーだと思っていたのに」

と思っても後の祭り。

このようなエピソードが満載な職業です。

ところでCNNではニュースの合間にCMが流れます。その際、キャスターがCM後の予告をするのですね。「お知らせの後は○○の話題です」という具合。画面にはそれに関連した映像も流れています。

ところが!

たった今、「お知らせの後は○○」と自分で訳しておきながら、いざCMになると、「あれ?この後どういうニュースが出てくるのだっけ?」と思う始末。ほんの数秒前に自分の口で訳して、自分の耳でしっかりと聞いていたのにも関わらず、です。

せっかくCM中(と言ってもわずか1分弱ですが)に、せめて事前知識を入手すべく、PCで調べようと思いきや、これではリサーチに至ることすらできません。そのようなことが頻繁に起こるのですね。

「これって、私の記憶力の問題??」

と思って、他の放送通訳者に尋ねてみると、みなさん「あるあるある~~~!」というお答え。そう、これぞ「通訳者あるある」なのです。

随分前に通訳の仕事が某バラエティ番組で取り上げられました。その際、「通訳者が必ず携帯しているお菓子は?」との問題が出たのですね。答えは「チョコレート」。脳を酷使するゆえ、甘いもので補給する必要があるのです。これも同じく「通訳者あるある」です。

他にも、「お財布を落としても諦められるけど、手帳を落としたら立ち直れない」という声も多数。そう、フリーで働く通訳者の多くは、スケジュールもまちまち。デジタル化全盛期の今でも紙版手帳を愛用する通訳者はおり、「手帳紛失=仕事の日程が不明」という恐怖に陥るのです。いかんせん、数秒前の「予告同通」の内容すら記憶があやふやになってしまうのですから、数日・数週間・数か月・数年後(ハイ、お仕事でだいぶ先のご依頼をいただくこともあります)の日程など、頭に収めきれません。

他にどんな「通訳者あるある」があるのか、これからも探してみるつもりです。

・・・と思った矢先に失念しそうです。

(2021年11月16日)

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