おすすめの韓国伝統酒は?

村岡:1つだけ挙げるのは難しいですが、あえて挙げるなら全ての伝統酒にとって「母なる酒」である生マッコリです。なぜ母なる酒かというとマッコリから様々なお酒に進化していくからです。 簡単にご説明すると、米に水と麹を加えたものを1~2週間発酵させます。そして、分離したもののうち濁っている部分がマッコリ、上澄みが薬酒で、この薬酒を蒸留したものが焼酎となります。こうしたお酒のストーリーを楽しむスタートとして生マッコリをおすすめいたします。 乳酸菌が生きた状態の生マッコリと違い、日本で飲めるマッコリはほとんど殺菌マッコリです。酵母が生きていると発酵が進み噴出する原因になりますので、現在多くのマッコリは加熱殺菌をして輸出されています。 私の知人が先日訪韓した際に生マッコリを試飲してもらったところ、「これ本当にマッコリ?すごくおいしい!」と、すっかりファンになってしまいました。それだけ本場で飲む出来立ての生マッコリは格別なのです。韓国旅行にいらっしゃる折にはぜひ味わっていただきたいと思っております。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

素麹酒 太田:お酒が苦手な方でしたら、素麹酒(ソゴッチュ)がおすすめです。他のお酒に比べてお米の割合が多いので、ほんのりとした甘味があり、飲み口もやわらかいです。

村岡:そのおいしさには逸話があります。昔、科挙(朝鮮時代の官吏登用試験)を受けるため両班(ヤンバン、貴族階級)の子息が都心にある試験会場に向かったのですが、途中で素麹酒の醸造場を通りかかりました。疲れていたので一杯飲ませてもらったところ、あまりの美味しさに数週間に渡って居座ってしまい、結局試験を受けられなかったそうです。そのことから「座り込んでしまうお酒(アンジュンペンイスル)」という別名もあります。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

「白蓮」はマッコリも人気 太田:女性受けするお酒だと、「白蓮(ペンニョン)マルグンスル」も飲みやすくておすすめです。こちらは今年3月、イ・ゴンヒ三星グループ会長の誕生日パーティーで乾杯酒にも選ばれたお酒です。イ会長自身がワインソムリエの資格を持っていて、毎年乾杯にはワインが出ていたのですが、初めて韓国国内の伝統酒が採用されたということでも注目を集めました。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

焼酎にショウガ、甘草、桂皮などを漬け込んだ甘紅露 村岡:朝鮮3代名酒と言われる「梨薑膏(イガンゴ)」「甘紅露(カモンロ)」「竹瀝膏(チュンニョッコ)」もぜひ試していただきたいですね。昔の文献には必ずと言って良いほどその名が載っており、現代にも造り方が伝えられているお酒です。

実際に生産地に足を運んで味わっていただくのが一番なのですが、ソウルご旅行中に購入なさるなら新世界百貨店本店に伝統酒専門店「ウリスルバン」がございます。韓国伝統酒振興協会が運営する売場で、今回ご紹介した伝統酒をはじめ様々なお酒が手に入ります。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

地マッコリを楽しめるバーが増加 村岡:韓国の大衆酒と言えば焼酎が代表的ですが、私はこの4年間、周囲の韓国人に「(伝統焼酎ではなく)なぜ焼酎を飲むのですか」と事あるごとに尋ねてきました。しかし答えは皆さん同様で、「早く安く酔えるから」という理由から市販の焼酎が選好されているのが現状です。

マッコリは近年おしゃれなマッコリバーや居酒屋が登場し徐々に関心が高まっていますが、大量生産されているマッコリ以外は買い切りで販売するため、専門店では割高なこともあり、まだまだ若い方には馴染みが薄いようです。ましてや焼酎は市販の焼酎と伝統酒で価格差が非常に大きいため、なかなか伝統酒が普及しにくい状況にあります。

太田:韓国ではお酒自体が「酔うためのもの」として強く認識されているので、これからは「味わうためのお酒」へと変化していってほしいと思います。韓国には非常に多彩な伝統酒があり、地域ごとに特色があります。また蔵元を訪問して感じたことですが、造り手の真心が込められている点が最大の魅力です。

韓国人はいつも飲むお酒が決まっていることが多いですが、もっと周囲にも目を向けてもらえるよう、伝統酒ソムリエとして自分の知識をさらに深めつつ、まだ知られていない伝統酒の存在とその魅力を伝えていきたいです。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
名前 太田恵美(おおた えみ) 出身地 神奈川県 在韓歴 2年 経歴 延世(ヨンセ)大学校韓国語学堂在学中、知人を通じて知った日本人マッコリソムリエ会に参加したことがきっかけで伝統酒に関心を持つ。日本人マッコリソムリエ会副会長(韓国副支部長兼任)。2014年農村振興庁認定・韓国伝統酒ソムリエ。社団法人韓国マッコリ協会名誉マッコリソムリエ。第5回韓国伝統酒ソムリエ競技大会入賞。 村岡:最近韓国では諸外国の料理店も増えてきました。今後、他国の料理の良さを知ると共に韓国の伝統的な料理の良さも再認識され、その次には料理に合ったお酒を探し求めるようになると思います。そのとき、「酔うためのお酒」ではなく「心に安らぎをもたらすお酒」として韓国伝統酒にフォーカスが当たるようになると良いですね。そんな日が来るまで、他国に類を見ない魅力を持つ韓国の伝統酒をより多くの方々に知っていただけるように努力していきたいと思っております。
第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

名前 村岡ゆかり(むらおか ゆかり) 出身地 兵庫県 在韓歴 4年 経歴 専門調理師免許(フランス・イタリア部門)を保持し、伝統食酒文化研究家として日本で講演・雑誌連載、TV出演等の活動多数。2010年に渡韓後、ビジネスサポートを行なう株式会社グローバルユー代表取締役社長を務める傍ら、韓国伝統酒の研究に取り組む。日本人マッコリソムリエ会会長(韓国支部長兼任)。

2014年農村振興庁認定・韓国伝統酒ソムリエ。社団法人韓国マッコリ協会名誉マッコリソムリエ。2014年に韓国農林畜産食品部長官賞、韓国マッコリ協会功労賞を受賞。第5回韓国伝統酒ソムリエ競技大会入賞。 「こってりした参鶏湯(サムゲタン)のスープにはキリっとした強めの焼酎が合いますよ。冬に温かい室内から外に出たときのようなキーンとした旨さがあります」。普段の韓国生活でもお酒を欠かすことがないと言うお二人ですが、伝統酒に関する表現が魅力的なこと!お酒を嗜まない人も思わず試してみたくなるような語り口はさすがでした。 インタビュー場所の「月香」では伝統酒を味わいながら理解を深められる「マッコリ&朝鮮銘酒ソムリエ体験」が開催中。講義は2時間と短時間で旅行者にもおすすめ。韓国のお酒に興味のある方はぜひ参加してみてください。

提供・韓国旅行コネスト

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