第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

左:太田恵美さん、右:村岡ゆかりさん

韓国の伝統酒というと、やさしい甘味と飲みやすい味わいが人気のマッコリがおなじみですが、焼酎(ソジュ)や韓国ワインも含めると1,000種をはるかに超えるということをご存知でしょうか?そんな伝統酒の世界に魅せられた人々が知識やサービスを競い合うのが、韓国伝統酒ソムリエ競技大会です。2014年で第5回を迎えた同大会に日本人として初出場・初入賞を果たし「伝統酒ソムリエ」の称号を獲得したのが、村岡ゆかりさんと太田恵美さん。お二人の韓国伝統酒との出会いやソムリエ活動について、梨泰院(イテウォン)のマッコリ居酒屋「月香(ウォルヒャン)」で伺いました。

マッコリを起点に伝統酒の奥深い世界へ

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

許浚の医学書「東医宝鑑」(世界記録遺産)にも関心

村岡:韓国に来たのはドラマ「チャングムの誓い」を観て、「食」と「医学」の密接な関係に感動したことがきっかけです。その後、朝鮮時代の名医、許浚(ホジュン)に関するドラマにも感銘を受け、色々調べていたところ、韓国は現代の食事にも韓方(ハンバン)という伝統医学が今もなお息づいている世界でも珍しい国だということが分かり、実際に韓国に行き「医食同源」をコンセプトに食文化を研究したいと思うようになりました。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

日本語で進行され旅行者にも人気のマッコリソムリエ体験教室

訪韓当初は宮中料理と韓医学の関連性に興味がありましたが、あるとき農林畜産食品部(部は日本の省に相当、以下農林部)主催のマッコリ祭りに参加する機会がありました。そこでマッコリだけでも1,000種類以上あると知り、その奥深さに大きな衝撃を受けたのです。さらに薬草をはじめとする韓薬を加えて造るお酒もあり「これこそ医食同源である!」と思った次第です。それからは「マッコリソムリエ体験教室」の受講からスタートし徐々に韓国伝統酒の世界に足を踏み入れていきました。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

皆で酌み交わす韓国の飲み方もお酒を美味しくさせる

太田:私は語学堂在学中に友人から誘われて参加した「日本人マッコリソムリエ会」が伝統酒に興味を持つ契機となりました。「日本人マッコリソムリエ会」は、「マッコリソムリエ体験教室」修了者のためのアドバンスクラスです。もともと日本にいるときから嫌いなお酒がないくらいお酒が好きだったので、せっかく韓国に来たなら現地のお酒にも触れてみたいと思い参加しました。マッコリ以外にも伝統酒等を色々試飲する機会があり、「お酒」という共通の趣味を持つ方たちにも出会い楽しい時間を過ごす中で、韓国のお酒の魅力にハマっていきました。

難関!韓国伝統酒ソムリエ競技大会

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

村岡:大会の存在は「マッコリソムリエ体験教室」を運営するミョン・ウク代表から聞き初めて知りました。食とお酒の関係について専門的な研究を進めていきたいと考えていたので、代表の勧めもあり出場を決めました。

大会は国家代表、大学生、外国人の3部門に分かれ、筆記試験に合格するとブラインドテイスティングを主とする本選、サービス技能等を競う決勝戦へと進み、最終的にグランプリが決定されます。私たちは外国人部門なので外国人用の問題が出ると思っていたのですが、試験内容はほぼ同じで困惑いたしました。しかしソムリエ会メンバーの方々の応援もあり、とにかく最後まで諦めず精いっぱい頑張ろうと必死に勉強しました。 太田:大会にあたり過去に国家代表部門で優勝した方を招いて勉強会を行ないました。初めて出場するため、大会の概要から試験勉強に必要な参考書、ブラインドテイスティングのコツまで基本的なことを中心に教えていただきました。また、一緒に出場するメンバーたちとの自費合宿も何度か行ないました。会議室を貸しきって勉強したり、テイスティングの練習として様々なお酒を試飲し感想を言い合ったりしながら味を覚えていきました。

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

勉強に使った参考書 生産地、原料、度数など

第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
基本情報は丸暗記 生産地、原料、度数など 基本情報は丸暗記
第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
村岡さんお手製の単語帳には 覚える内容がびっしり 村岡:一口に韓国伝統酒と言っても、マッコリ、マッコリの上澄みである薬酒、薬酒を蒸留した焼酎、韓国ワインと多様なお酒が試験対象になります。伝統酒の歴史や発酵学に関しては専門書を読みましたが、全て韓国語なので理解するのに苦労いたしました。また、醸造に関する用語などは酒類業界でのみ使われている昔の言葉も多く、書物やインターネットで検索しても見つからないため、専門家の方々のお力をお借りして乗り切ることができました。特に、日本酒の利き酒師の資格を持ち、韓国の大学で日本酒の講義もしているミョン・ウク代表からは、難解な醸造用語等を分かりやすい日本語に変えて教えていただくなど、代表なくしてはここまで来れなかったと思います。
第82回~村岡さん・太田さん(韓国伝統酒ソムリエ)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

太田:私は韓国の地理を全く知らなかったので、全国各地の醸造場の位置を覚えることが一番大変でした。勉強法としては、まず韓国地図を描き、ここが江原道(カンウォンド)、慶尚道(キョンサンド)…と地名を書き込みます。さらに醸造場の場所を点で入れていき、生産地とお酒の名前、原料などをセットでイメージできるまで、何度も見返して覚えていきました。

頑張った甲斐あり、大会では村岡さんと共に入賞することができました。他の出場者からも刺激を受け、とても良い経験になっただけでなく、今まで「おいしい」という感覚だけで楽しんでいた伝統酒について深い知識を得たことでお酒に対する見方や飲み方が変わりました。