2021年10月29日より、映画『そして、バトンは渡された』が公開されている。本作は第16回本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの同名ベストセラー小説の映画化作品だ。
映画『そして、バトンは渡された』
その目玉は豪華キャストであり、笑顔を絶やさないよう懸命に生きる永野芽郁、自由奔放な「魔性の女」となった石原さとみ、「異なる立場の父親」の大森南朋や市村正親など、個性的な役柄にマッチしたそれぞれの熱演をたっぷりと楽しめるだろう。 その中でも、みんなが大好きな田中圭が「不器用だけど優しい義理のお父さん」に扮していることを特筆しておきたい。 2021年の「父親にしたい俳優No.1」にも選ばれた彼が本気でその役を演じれば、「ありがとうございます!」と感謝し拝むことになるだろうと思ってはいたが、実際に観ると「お父さんを僕にください!」と心の中で懇願していた。 優しさいっぱいの物語の特徴を記しながらも、理想オブ理想の田中圭のお父さんが爆誕した理由を記していこう。
4回名字が変わった少女が主人公
あらすじから簡単に記しておこう。義理の父の森宮さんと一緒に暮らしている女子高生の優子は、ピアノが上手な同級生の早瀬君に惹かれていた。一方、シングルマザーの梨花は幼い義理の娘のみぃたんに愛情を注いでいたが、その生活は長くは続かなかった。やがて、優子の元には「母」からの手紙が届き、そこで家族の「秘密」を知ることになるのだが……。 永野芽郁が演じるのは、「これまでに4回苗字が変わった」女の子だ。つまりは親の死別や離婚を経験しているということであり、その設定だけ聞くと「かわいそう」「ひどい境遇だ」などと思われるかもしれない。だが、「今」の彼女が「田中圭演じる義理の父と接しているときは、掛け値なしに幸せそうだ」ということが重要だ。
「おいちょっと代われ」と言いたくなる親子関係
もちろん、それは「義理の父親が田中圭だったらそれだけで幸せに決まっているだろ」という意味ではない(その気持ちも大いにあるが)。彼が今回演じているのは「無理に怒ろうとするとお腹が痛くなる」ほどにお人好しで優しい性格の持ち主で、事あるごとに「父親らしく」しようとがんばっていて、しかもおいしい料理をたくさん作ってくれたりもするのだから。 そんな父に対して娘は「父親ぶらないでよ」となかばあきれたり、微妙にズレた言動にツッコミを入れたりもするのだが、本気で嫌っているわけでも、過度にイチャイチャしているわけでもなく、それこそ「気の置けない歳の離れた友だち」のような自然体の付き合い方をしているように見える。 劇中で自身の家庭環境に悩む同級生がその親子関係を羨むシーンがあるのだが、観客も同じく楽しそうに田中圭をイジる永野芽郁を見るたびに「おいちょっと代われ」と思うことだろう。