ヨンスは取材のなかで、「他の人から、『コイツは負け犬だ』って目で見られていることは知っている。だから人目につかない夜になってから外へ出て、タバコを吸いながら野良猫を見てるんだ」と語っていた。
韓国国内の家計負債は近年増加傾向にある。現在ではGDPの100%以上に相当しており、これはアジアの他の地域では見られないレベルだ。
さらに若者の失業率が上昇。その上、大都市の不動産価格が高騰し一般人には手の届かないものになっていることから、債務超過だけでなく所得格差も劇的に拡大している。
「イカゲーム」でも描かれているように、人々は突然のリストラや投資の失敗、またちょっとした不運だけでも、当面の生活費を得るためにリスクの高い金融機関に頼ってしまうのだという。
取材に応じたヨンスも、すさまじいスピードで借金地獄に堕ちた1人だ。
2年前まで、ヨンスは新進気鋭のIT企業で働いていた。しかし長時間労働や深夜までの残業が続き、体調を崩してしまう。妻とも話し合った結果仕事を辞め、故郷インチョンでパブをオープンすることにした。
しかし彼らは後に、この決断を後悔することになる。「億万長者になりたいなんて思ってなかった」そう語ったヨンスは、「これまでと同じくらい稼げればよかったんだ。僕はただ、これまでより数時間長く寝たかった」と続けた。
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