医療現場から見えた子供の貧困の姿とは?
また、貧困状態の子供や家族に寄り添う医師がいる。長野県にある健和会病院の小児科医、和田浩氏は「困窮家庭の子供は、ぜんそくを発症することが多い」と語る。 「理由はまだ明確に解明されていませんが、子供のぜんそくはダニやホコリなどのアレルギーが原因にあることが多いです。困窮されているご家庭は、部屋数が少なく狭かったり、どうしても環境がよくない状態になってしまう」
和田浩氏
困窮した家庭の子供は病院にアクセスしづらくなるという。親の就労環境が直に影響するからだ。 「困窮している親たちはダブルワークやトリプルワークをしている人も多く、子供を病院に連れてくる時間がとれないのです。さらに、より深刻な問題として、困窮して時間的にも精神的にも余裕がなくなってくると、前向きな気持ちになれず、医師の指示にも従わなくなったりしてしまうんです」
医療費500円が払えない家庭も
また、子供の医療費の負担分も影響しているという。 「子供の医療費助成の制度で、長野県は中学3年生までは一律500円の一部負担金が必要です。『それくらい払えるだろう』と当然のように思われがちですが、現に払えないご家庭もあるんです。子供の健康格差をこれ以上広げないためにも、完全無料化の実現が求められます」 そうした貧困家庭のために、健和会病院では医療サービス以外に食料の支給なども手掛けている。
健和会病院の休憩室には、スタッフが持ち寄った子供服などが並ぶ。無料で誰でもレンタル可能だ
「実家が農家の職員もいるので、余った古米をもらって必要な人には差し上げています。また、職員が寄付してくれた子供服を休憩室に置いて持ち帰ってもらったり、入学式で着るような少しいい服を無料レンタルしたり。 それは貧困とか関係なく、誰にでもお貸ししています。やはり『貧困対策』という見え方だと嫌がる親御さんもいますので、できるだけ自然に寄り添えればと思います」 子供の健康を守る動きは、さまざまな場所で動きだしている。 【和田 浩氏】 健和会病院(長野県飯田市)院長。日本外来小児科学会「子どもの貧困問題検討会」代表世話人も務める。小児科専門医。’09年頃から子供の貧困問題に取り組む <取材・文/週刊SPA!編集部>
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