「熱も冷めたアスファルトの上 チョコレート……」  2021年9月15日に発売された岩田剛典(32)のソロデビューシングル「korekara」はこんな歌い出しから始まる。
 2020年で活動10周年を迎えた「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」(以下、三代目)のパフォーマーとして活躍してきた岩田がステージ上で見せてきた激しくワイルドでキレキレのダンスパフォーマンス姿からは想像できないくらいマイルドでメロウな曲調が印象的だ。

セルフプロデュースしたMV

 セルフプロデュースしたMVでは、特に技巧を凝らすわけでもなく、シンプルな照明のスタジオ撮影が大人の雰囲気を見事に演出している。「korekara」というタイトルからも分かるように、自分の表現性を改めて見つめ直していくような、ゆったりとした時間の流れを感じる。  歌詞はさらに「行き先は誰も知らない」と続く。  それは、デビッド・ラシャペル監督によるドキュメンタリー映画『RIZE』(2005)を観て、L.A.ギャングの抗争が起源のクランプ(KRUMP)ダンスの魅力に引き込まれて以来、ストリート系の表現をバックグラウンドにパフォーマーとしてのスキルを磨いてきた岩田が、自分のスタイルの飛躍として一歩を踏み出し、模索し始める宣言にも聴こえてくる。  その先には、“korekara”という未来図として清々しい方向性が見据えられているかのようだ。

俳優活動が表現者としてのステップアップに

 では、そんな岩田は、三代目のボーカルの登坂広臣と今市隆二の背中を追いながらも、なぜ肩を並べるようにボーカリストとしてソロデビューを果たすことができたのだろうか?  岩田がソロ活動を視野に次のステージを考えたとき、パフォーマーと並行して情熱を注いできた俳優活動が“表現者として新たな一歩を踏み出すためのステップアップ”になっていたのではないかと筆者は考えている。  主演・助演問わず、出演する映画作品でさまざまなキャラクターを演じ分けるなかで、岩田の表現性は確かなビジョンと確かなカタチを持ってバージョンアップされてきた。そんな岩田の表現性を代表的な映画作品から時系列で紐解いてみたい。