一枚の小さな葉っぱを切り抜いてつくる「葉っぱ切り絵」。SNSで話題の葉っぱ切り絵アーティスト・リト@葉っぱ切り絵さんの作品は、その精巧さもさることながら、まるで絵本のワンシーンのような、見る人の想像力を膨らませ、ワクワクさせてくれる世界が葉っぱの上に広がっています。
ほぼ毎日SNSで作品を発表するたびに、リトさんのもとには「優しい世界に癒されます」「見るだけで幸せな気持ちになれます」「明日も頑張ろうという気持ちになります」など、多くのコメントが寄せられるそう。
落ち込んでいるとき。心がモヤモヤするとき。さみしいとき。リトさんの作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』(講談社)をめくるたび、そこに自分だけの物語を見つけられるはず。
本書から、リトさんが葉っぱ切り絵アーティストになったきっかけと、葉っぱ切り絵の素敵な世界をご紹介します。
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ADHDと診断されてサラリーマンを辞める
葉っぱ切り絵アーティストとして活動しているリトさんは、もともとサラリーマンだったそう。
「物忘れは多いわ、不器用で要領は悪いわ…。自分で自分のことが嫌いになるくらい、まったく仕事ができないダメ社員だったんです」
そんなリトさんが、どうして今アート制作をやっているのか。そのきかっけは「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」という言葉との出会いでした。異常な物忘れの多さや要領の悪さ、直したくても直らない自分のダメな部分は、ADHDによる先天的なものであることが判明します。
「病院で診断を受け、そのまま逃げるように会社を辞めたぼく。これからどうしよう…。普通の人のフリをして働くか。それとも障害者としての配慮を受けながら働くのか。…ぼくは正直どちらも嫌だった。どうせなら自分の得意なことを仕事にしたい」とあれこれ悩んで、辿りついて一つの答えが「アート」でした。
集中力を生かして、葉っぱの切り絵を始める
小さい頃から、集中力だけは人一倍強かったリトさん。特に細かい作業に集中しはじめると、周りの声も聞こえなくなるくらい何時間も没頭し続けられるそう。この過剰な集中力は「過集中」といって、ADHDの人の特徴として見られるものなのです。
そんなこんなで、思いつきで始まった創作活動でしたが、あるとき一枚の葉っぱに出会います。それはインターネット上でみつけた、スペイン人の「leaf art(リーフアート)」でした。一枚の葉っぱで表現された、森の中で草を食べる動物たち。その作品に一瞬で引き込まれたリトさんは、次の日には公園に自分も葉っぱを探しに行きます。
そして、没頭しすぎてしまう集中力を生かして、葉っぱの切り絵を始め、SNSに投稿したところ、沢山の応援メッセージが届くようになったそう。
見よう見まねで始めた葉っぱ切り絵でしたが、SNSで話題になり今やフォロワー数は20万人超! 作品は400を超え、葉っぱ切り絵の制作を始めて1年で初の個展を開催して以来、作品展では常に作品は即完売する人気ぶりです。
「短所だと自分でも思っていたところが、裏を返せば長所だった。自分がいる場所さえ変えれば弱みだって強みになるんだと、前向きになれた」とリトさんは振り返ります。