体罰、暴言、過干渉……子どもを自分の思い通りに支配しようとする毒親。我が子を愛する普通の親でも、時に子どもにとって毒となる言動をとることがある。
日本社会の仕組みが“毒親”を生む
カウンセラーの高橋リエ氏は、子育て世帯の孤立や、しつけや育児に対する同調圧力などの要素が重なり、現代の日本は「毒親」を生みやすい社会になっていると語る。
「戦前まで、子育ては親戚や近所の人々と協力しながら行うものでした。ところが、核家族化が進み、子育て世代が孤立した結果、現代の親は、育児だけでなく家事も仕事もこなす必要に迫られています。負担が増えて余裕がなくなると、弱い存在である子どもにストレスの矛先が向いてしまうのです」
こうした育児環境の問題に加え、親には“子どもをきちんとしつけなくてはいけない”というプレッシャーがつきまとう。
「本来、子どもは3歳までしつけをする必要はありません。ただかわいがるだけでいいのです。しかし実際は、“親が子どもをしつけるべき”という強迫観念が、昭和から数世代にわたって受け継がれています。
自分が幼少期に叱責されて育てられた親は、子どもが騒いだり、食事中ご飯をこぼしたりといった、ちょっとした失敗にも反射的に声を荒らげる傾向があります。親自身がコントロールできないほどの感情を日常的にぶつけられた子どもは、過緊張体質になりやすく、将来アダルトチルドレンに育つ一因にもなってしまうのです」
過度なしつけがトラウマに
また、日本人特有の横並び意識も、子どもに毒を与えてしまうきっかけとなりうる。
例えば、子どもを保育園に通わせている都内在住のA子さんは、4歳になった子どもが、ひらがなを読めないことを気に病んで、家で猛特訓させたという。
「お友達の中には、カタカナまで読める子もいる。自分の子どもの発達が遅れているのではないかと心配になって、トイレの壁に五十音表を貼ったり、夜、子どもが寝たがっているのに無理に絵本の読み聞かせをしたりしていましたね」
A子さんのように、周囲と比べて焦りを募らせる親は少なくない。
「文字の読み書きを覚えるのが遅い、小学校中学年なのに逆上がりができないなど、ヨソと比べて自分の子どもにできないことがあると必要以上に心配する親もいます。そのことで子どもを責める、無理に練習させるなどの行為は、トラウマを植えつける行為といえるでしょう」(高橋氏)