「患者が患者を看病する」という壮絶な状況

 今回、妹の話を聞いて感じたことは、自宅療養の家庭内で複数の新型コロナウイルス感染者がいる場合、感染者同士でも「看病する者」と「看病される者」の役割分担が生じるということだ。

 体調や年齢の差によって、患者が患者を看病する事態が起きる。さらに幼い子どもがいる家では必然的に、育児と家事とが親へと降りかかる。

新型コロナ「一家で自宅療養」の壮絶さ。「39度の熱でも子供の世話しないと」
(画像=『女子SPA!』より引用)

先述のとおり、妹一家には4歳と7歳の子どもがいるのだ。食事時には洗い物が出ないよう紙コップや紙皿を使っても、床に食べこぼしが積もっていくし、洗濯物はエンドレスに出続ける。ゴミ箱はあっという間にいっぱいになり、冷蔵庫の生ものはすぐに空っぽになる。トイレは排泄物で汚れ、床にはブロックやミニカー、人形が散乱して、部屋は瞬く間に荒れていく。

 本来なら治療を受けて体を休めるべき時期に、家族が生きるための最低限の家事に加えて、子どものぐずり、遊びの対応、ケンカの仲裁など「フルタイム」の育児が続き、体を休める暇がない。39度を超える熱が続いているにもかかわらず、だ。

 そのような状況では当然、夫婦間には張り詰めた空気が流れるだろうし、先の見えない閉塞(へいそく)感からだんだん心も疲れ果ててしまう。

「これから、親子総感染が増えると思う」と医療従事者

 下がる気配のない高熱と症状に7日間苦しみ続けた妹。現在、発症8日目にして「ようやく体調が回復してきた気がする。ただ、食欲が戻らない」と語る。

 実家の親は、食料品や日用品のほか、おもちゃや本など、子どもたちが室内の時間を楽しく過ごすためのものを玄関先に置き、一戸建ての窓のカーテンのすき間から子どもたちの気配を探す。

新型コロナ「一家で自宅療養」の壮絶さ。「39度の熱でも子供の世話しないと」
(画像=『女子SPA!』より引用)

妹一家や実家と離れて暮らす筆者は、医療用の防護服やゴーグルなど、万が一のときに使えそうな物資や便利アイテムを親宛に送った。「五輪で余った医療用ガウンと医療用マスクを大量に廃棄するんなら、それ、おすそ分けしてよ……」と思いながら。

 実家のある市で医療従事者として働く友人に相談したところ、「市内のコロナ患者の病床がかつてないほどひっ迫していて、軽症と判断された人はもれなく自宅療養だ」と語っていた。夏休み終盤には学童保育で集団感染が起こるなどして子どもの陽性者が激増したため、「これから、親子総感染が増えると思う」と危機感を募らせていた。