新型コロナウイルスの感染拡大が続き、医療のひっ迫が続いている。
“第5波”と呼ばれる今、自宅で自分をケアする「自宅療養者」の数も急増している。厚生労働省のまとめによれば、新型コロナウイルスに感染し自宅療養中の人は、全国で13万5000人超(9月1日0時時点)。そして毎日のように、自宅療養中の患者の死亡や重症化のニュースが報じられている状況だ。
「療養」の本来の意味は、「病気を治すために治療し、休養すること」。つまり、本来は“治す”ためのプロセスである。しかし、実際には悪化していく体調と向き合い続けなければならないケースもあり、その場合に伴う大きな不安と恐怖は計り知れない。
8月下旬、ついに筆者の身内も新型コロナウイルスに感染した。遠方に住む妹が、一家で感染してしまったのだ。この記事を執筆している現在はまだ完全に回復しておらず、家族で自宅療養を続けている。
本記事では、妹の体験を例に「患者が患者を看病する」という事態の深刻さを伝えていきたい。
職場で新型コロナに感染。最初は立って動けていたが……
8月下旬のある日、地方に暮らす筆者の妹(30代・ワクチン未接種・基礎疾患なし)からメッセージが届いた。「新型コロナウイルスにかかったかもしれない」という連絡だった。
きっかけは、妹の職場で1人の陽性者が出たこと。同じ空間で働いていた同僚たちはマスクをして接していたために、管轄の保健所からは「濃厚接触者には当たらない」と判断された。しかし、念のため同僚と話し合って自費で自主的にPCR検査を受けたところ、6人の社員が感染していることがわかった。
連絡が来た日の夜、妹へ電話をするとすでに発症していた。ただこの時はまだ、「熱が上がってきたけど、動けているから大丈夫。これくらいで済むならいいな」と比較的元気な声で話していたのを覚えている。
電話の後ろからは、2人の子どもたち(4歳、7歳)がにぎやかに騒ぐ声が聞こえていた。
39度を超える熱が続く。発症3日目には夫と子どもも発熱
妹一家の徒歩圏内には両親が住んでいるが、年齢や持病を考えると家の中に入って看病や子守りを手伝うことはできない。そこで、しばらくは親が食料と日用品を玄関先に置き、1日に何度か安否確認の連絡を入れることになった。
感染した妹は、発症の翌日から39度を超える熱が続いた。家庭内には子どもが2人おり、トイレも風呂も1つ。検査の直前まで家族で一緒に会話や食事をしていたため、家庭内感染は免れなかったのだろう。
発熱後は倦怠(けんたい)感と味覚障害で食欲を失った妹。一時期、備蓄食料も親から届けられた食料も食べることができなくなったという。1日のうちに39度前後の熱が出たり下がったりする状況が7日間続き、発症から3日目には夫と子ども1人も発熱した。幸い、子どもの熱は1日で下がったが、夫の症状はまだ続いており、仕事復帰の目処はたっていない。
1日に何度か事前に購入しておいた簡易的なパルスオキシメーターで血液中の酸素飽和度を測定する。酸素飽和度が90%台前半まで低下したので何度か保健所に相談をしたものの、「ゼーゼーしてどうしても苦しくなったらすぐに連絡してください」と言われるのみだったという。
編集部注)酸素飽和度が低下した場合、肺や心臓のトラブルが推測されるので精査が必要。酸素飽和度が94%以下になると、酸素投与が必要な場合がある(パルスオキシメーターに関して、女子SPA!の医師取材記事参照)