子の人生を蝕む“毒親”でも、捨てるのは非情なのか? 今回は実際に親を捨てた評論家・古谷経衡氏と家族じまいに詳しいノンフィクション作家・菅野久美子氏による対談を実施。アンケート(文末参照、回答:30~50代の70歳以上の老親と離れて暮らす男性300人)をベースに、究極の選択に迫る。

「私たちはすでに“親”を捨てている」

――まず古谷さんは親を捨てていることを公言しています。

古谷:僕は幼少期から教育虐待を受けたのが大きな理由です。昨年10月には『毒親と絶縁する』(集英社新書)で、母親に左耳の鼓膜を損傷させられ、冷水を浴びせられたり、性的虐待もあったりしたことを告発しました。

 現在でもパニック障害とうつ病を患っていますが、親を問い詰めても一切反省の色なしで、それなのに僕がメディアで活躍すれば「投資の賜物」と言う。こんな親は捨てても当然。

菅野:ウチも似ています。親が教師なこともあり、かなり教育熱心で、意に沿わないと母親に暴力を振るわれることも多々ありました。そのせいで自己肯定感が低く、いじめ被害や不登校にも……。

 大人になって問い詰めたんですが、「覚えてない」と認めない。虐待の自覚や記憶すらなかったり、正当化するのは、捨てられる親の特徴かもしれませんね。

子供側も育ててもらった恩があるから…

古谷:特に我々の親は団塊世代で、受験競争が厳しくて、学歴と社会的地位を得るのに必死に生きてきた。子供にいい教育を!という主張はなまじ正論だし、自分の過去の非道行為も正当化してしまうのもわかる気はします。

 子供側も育ててもらった恩を享受しているから、声を上げられない。Q3「1年以上帰ってない人は、その理由は?」で帰らない理由を「親と仲が悪いから」はわずか4人だけですが、これは我々のように反旗を翻した人たちでしょうね。

菅野:帰らない理由で「時間がない」「お金がない」という理由が約4割を占めているのも現代的ですよね。うちは実家が九州なんですが、一家で帰省となったら飛行機で数十万円かかるわけですから、確かにきつい。

古谷:この数字は多分、親の価値と金銭を天秤にかけてると思います。“時間やお金がない”は言い訳で、親との関係性を損得で回答を選んでいる。男女の恋愛でもそうですが、お金がないとか、忙しいから会えないって言い訳ですから。

菅野:なるほど、親にそこまでの価値がないと。