事実婚に切り替え、夫婦別姓になることのメリット

 法律婚からペーパー離婚して事実婚になり、夫婦別姓を叶えていくという、前例のあまり多くない選択をしようとしている牧野さん。だからこそ、取り組みが注目されることも多いといいます。ただ当事者として、事実婚に関係性を変えることには、メリットだけでなくもちろんデメリットも感じています。

「メリットとしては、その先の選択肢が広がるということと、仕事上の旧姓使用によるトラブルが減ることです。私は元々仕事では牧野姓を名乗っていましたが、過去に郵便物が紛失したり、渡航した際はパスポート名が異なるという理由で関税に引っかかったりしたこともありました。こうした物理的な問題は解消されるのでメリットといえます」

 結婚前のカップルが事実婚を希望する理由として、各種名義変更の手続きの煩雑さから逃れられることや、ふたりともが私生活でも仕事上でも旧姓を使い続けられること、また改姓によるアイデンティティの喪失を防ぐ、といった部分が語られることが多いです。

 住民票や運転免許証などでの旧姓併記が認められる、旧姓での銀行口座開設が一部銀行で認められるなど、旧姓使用のための取り組みは少しずつ進んでいます。とはいえ、まだまだ理想の状態にはほど遠いのが現実。改姓のデメリットを感じる度合いは、立場・職業や職場環境などにより大きく異なります。それは改姓しない側や、デメリットを感じない人には、非常に理解されにくい部分でもあります。

【関連記事】⇒「夫婦別姓は子供がかわいそう」の根拠は何?別姓にしてよかったママの胸中

事実婚に切り替えると夫婦で共同親権が持てない

「デメリットとしては、やはり法律上の夫婦でないと共同親権(※)が持てなくなることです。私たちにとって、夫婦別姓と共同親権はセットで実現させたいものなのですが、現行の制度上はそれが叶いません。私と夫も、この部分にはかなり悩み、話し合っている最中です」(※「共同親権」とは、父母が共同して子に対して親権を持つこと。日本の民法では、離婚後は父母いずれかが親権者となる「単独親権」を定めています。)

共同親権への取り組みについては前々回の記事で詳しく語っていただきましたが、こうした行動について、周りの理解はどのような感じなのでしょうか。

「両家の親からは、反対をされています。『え、なんで?』という声と『現時点で理解できないし、今後も理解できないと思っている』と言われました。ただ、私もあまり前例のない取り組みをしようとしている自覚はあるので、認めてくださいとは思っていません。私たちの枠は、私たち自身で作るものだと考えているので、それが周りの理解や反対によって揺らぐものではないと思っています。その時、その状況での最適を、常に考えるしかないと思っています」