今年の春夏、SNSやテレビ番組はイタリア・ローマ発祥のお菓子「マリトッツォ」で賑わいました。「マトリッツォだっけ、マリトッツォだっけ?」と迷う人も続出する中、アラフォー以上の世代は、1990年代のパンナコッタブームやティラミスブームを懐かしく思い出したのではないでしょうか。

このブームについて本場イタリアでは、7月2日に伊・大手新聞 La Repubbulica のニュースサイトが「マリトッツォが日本と韓国でスターになった」という記事を取り上げています。

 インスタグラムで #maritozzo(マリトッツォ)とイタリア語で検索すると、日本語と韓国語の投稿で埋め尽くされているという異常事態に、驚きを隠せない様子のイタリア人記者。さて、日本でとつぜん起こったマリトッツォブーム、イタリア人たちの目にはどんな風に映っているのでしょうか?

日本流の“几帳面な”アレンジマリトッツォに驚き

 マリトッツォはたしかにローマを代表する伝統菓子の一つではあるものの、全国的に誰もが知る食べ物というわけではありません。そのため、イタリア人にとっては「日本人がマリトッツォを“発見した”」という感覚のよう。  まあ、外国から新しい食べ物を見つけてきては爆発的に流行らせ、1年後にすっかり忘れてしまうのは、日本人の得意技ですからね。

 私たちも、もし京都の「生八ツ橋」がイタリアで流行したらなるほどと思いますが、「イタリアで長五郎餅(ちょうごろうもち)が超ブーム」と聞いたら、よく見つけたな! とびっくりしますよね。国内の知名度で例えるならば、そんなイメージでしょうか。

日本のマリトッツォブームで、イタリア人が驚いた3つのこと「几帳面さが出てる」
(画像=『女子SPA!』より引用)

何より彼らの度肝を抜いたのが、日本での華麗なアレンジっぷり。現在イタリアで販売されている一般的なマリトッツォ(Maritozzo con la panna)は、皆さんもご存知の、ホイップクリームを丸いパンでサンドしたごくシンプルなお菓子。夏にはときどきジェラートを挟んで売られていることもあるといいますが、それでもごく簡素なものです。

 一方で日本のパティスリーに並ぶのは、抹茶やイチゴのクリーム、フルーツなどが入った色とりどりのアレンジ版マリトッツォ。詰め物のクリームは、“日本人らしく”スパッとまっすぐ整えられていたり、均等にカットされた具材が几帳面に整列していたりと、自国のマリトッツォとはだいぶ様子が違います。(後述しますが、マリトッツォ発祥の地・ローマの一部のお店やイベントでは、もっと気楽なアレンジマリトッツォが見られます)

また、マリトッツォのような日持ちのしない菓子パンが、大量生産されてスーパーやコンビニで売られている光景も、コンビニ文化のないイタリア人たちにとってはかなり不思議な現象のようです。

「イタリアでのSUSHIの“扱い”」を思い出す

 “日出ずる国のマリトッツォの解釈”にちょっと苦笑いしつつも興味津々な同紙が引き合いに出したのは、イタリアで長年続いている「寿司ブーム」。「私たちが日本の『SUSHI』をマヨネーズやチーズで改造して、“ひどい目に遭わせて”きたことを思えば……」と、日本でのマリトッツォブームを生温かく見守る姿勢です。

 日本でも回転寿司チェーンに行けばハンバーグやコーンがのった変わり種の寿司は沢山あるものの、寿司の“型”はどこか守られています。一方、イタリアに限りませんが海外で日本料理店に行くと、時にスイーツのように盛り付けられたアレンジ寿司に出くわすこともあります。日本人がマリトッツォに対しておこなっているのは、これと逆のことなんですね。イタリアのお気軽なお菓子を、几帳面な“日本の型”に、当てはめている。だからちょっと滑稽(こっけい)に映るわけです。

日本のマリトッツォブームで、イタリア人が驚いた3つのこと「几帳面さが出てる」
(画像=『女子SPA!』より引用)

そんな寿司とマリトッツォを比べつつイタリア人の気持ちを推察すると、「自国の味が注目されて嬉しい気持ちと、色々ツッコミたい気持ちが入り混じり……」といったところでしょうか。では実際に、イタリア人たちの生の声を聞いてみましょう。