配信だけにしたグラストンベリーの味わい

 コロナ禍は紛れもない危機ですが、同時に新たな視点も提供してくれました。大規模フェスの物量の中で埋もれていた、音楽のささやかな喜びを再び気づかせてくれる試みがありました。

 昨年大規模なロックダウンを行ったイギリス。フジロックと同じように、屋外に大勢の観客を入れて行われるグラストンベリー・フェスティバルですが、昨年も今年も中止を余儀なくされました。かわりに過去の動画や限られた形での生演奏を配信したのです。名前も、“フェスティバル”(お祭り)から“エクスペリエンス”(体験)に変更する念の入れよう。

 昨年の配信で特に印象的だったのが、広大な牧草地帯にひとりたたずむローラ・マーリング。草を食む牛のそばで、アコースティックギター1本の弾き語りを披露した姿は、静寂の力強さをたたえていました。ふだんならば大歓声にかき消されてしまっただろう楽器の音と歌声が風景に溶け込む情緒は、ピンチだからこそ味わえるぜいたくな瞬間でした。

 焚き火を囲んでセッションを展開したヌバイア・ガルシアの音楽も、味わい深かった。炎と煙が醸す究極のミニマリズムが、楽曲を際立たせていました。

一人で静かに聴くという音楽体験

 同じようなことをフジロックだってできたはずだし、おそらくはそうすべきだったのだと思います。反感と批判を尻目に騒ぐよりも、動きを止め、ボリュームをしぼった方が、開放感を得られる場合だってあるはずです。そういうアイデアを提案するのではなく、お祭りイベントとして容易い快楽に傾いてしまったことが残念でなりません。

 不要不急の娯楽を支持したいからこそ、今回のフジロックにはがっかりしているのです。

<文/音楽批評・石黒隆之> 石黒隆之 音楽批評。カラオケの十八番は『誰より好きなのに』(古内東子)

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