新型コロナウイルスのデルタ株が猛威をふるう中、観客を入れて行われたフジロックフェスティバル(8月20-22日、新潟県湯沢町苗場スキー場)。来場者は正式発表されていませんが、のべ3万5000人との報道があります。  現地参戦した人や配信動画を観て感動する人たちがいた一方で、疑問の声も続出しています。

フジロックに厳しい声「いま観客入れてやるか?」。賛否の埋まらない溝
(画像=『女子SPA!』より引用)

「観客あり」でやった結果は……?

 運営サイドやMISIAをはじめとした出演ミュージシャンは、マスク着用や飲酒禁止などの感染予防対策を呼びかけましたが、デイリー新潮(8月21日配信)の現地取材によると、屋根付き会場の若者たちはステージ前で“密”になり盛り上がりまくっていたとのこと。  さらには東京から大挙してやってきたと思しき大量の車に、公式グッズ売り場ではソーシャルディスタンスそっちのけで長蛇の列。おざなりになってしまった対策が、懸念を抱かせる実情をリポートしていました。

フジロックに厳しい声「いま観客入れてやるか?」。賛否の埋まらない溝
(画像=フジロックに厳しい声「いま観客入れてやるか?」。賛否の埋まらない溝)

「五輪に反対した人がフジロックに出る」ことに批判が

 出演ミュージシャン等の言動も、議論を呼んでいます。というのも、彼らの中には感染を拡大させるとして東京五輪への反対を表明し、開催後も中止を強く訴えた人たちがいるから。にもかかわらず、フジロックという大規模イベント開催への理解を求める姿勢が、あまりにも身勝手だと批判を受けているのです。

 シンガーソングライターのSIRUPは8月18日に長文のツイートの中で、<フジロックは日本が世界に向けて誇れる最大級の文化のステージであり、これを失うことは大きな損失になることは事実です。>と、開催の意義を主張しました。

 このSIRUPのツイートに、アジアンカンフージェネレーションの後藤正文が反応し、8月19日にnote上に文章を発表。開催を求めること自体がエンタメサイドの甘えなのではないかとの葛藤も覚えつつ、それでも様々な責任を引き受けなければならないという、苦しい胸のうちを明かしたのです。

 こうしたミュージシャンたちの叫びに、一部音楽ファンからは共感する声があがったものの、残念ながら大方の世論は否定的でした。SIRUPのツイートは、“だったらフジロックをオリンピックに置き換えても同じこと”とツッコまれ、後藤氏に至っては21日に突如ツイッター休止を宣言してしまったほど。厳しい批判が多数寄せられたのでしょう。

東浩紀氏は、「ダブルスタンダード」とバッサリ

 ほとんどの人は、ミュージシャンにも背に腹は代えられない事情があることは理解しているはずですが、同情よりも反感が上回ってしまった背景を鋭く指摘したのが、批評家の東浩紀氏でした。

 無観客の東京五輪を批判しながら、フジロックの開催に理解を求める姿勢はダブルスタンダードだとバッサリ。結局フジロックに出たい・観に行きたいと言うのなら、五輪反対と言うべきではなかったとし、東氏は自身のツイッター上でこう諭したのです。 <別の表現でいいかえれば、フジロックやってもいいけど、それならほかのひとの行動にも寛容になれってことですよ。自分たちが我慢できないのに、他人にばかり我慢を要求するなってこと。>  感情論ではなく、発言と行動の辻褄が合っていないことがおかしいと言っているのですね。