雨にまつわる美しい言葉をご紹介します
急に降ってきた土砂降りの雨、しとしとと長く降り続く厄介な雨。雨というと面倒な、ネガティブなイメージを持っている人が多いことでしょう。
今回ご紹介するのは、そんなちょっぴり気分の下がる雨への見方が変わるような、美しい言葉たちです。古くから日本には、情緒あふれる雨にまつわる言葉が使われてきました。
この記事では言葉そのものが美しいものや、雨で濡れる情景が目に浮かぶような日本語をピックアップしたので、ぜひ覚えてくださいね。
雨を表現する言葉《小雨》
雨粒の小さな雨が、弱く降る様子や小降りの雨を「小雨」といいます。パラパラと降る小雨に降られた経験は誰しもがあるはずですし、気象情報や日常会話でもよく耳にする身近な表現ですよね。
ですが一口に小雨といっても、その様子からさまざまな言葉があるものなのです。ここでは、小雨にまつわる美しい日本語の言葉たちを5つご紹介します。
細かい雨粒が風に乗って宙を舞う「霧雨」
「霧雨(きりさめ)」は霧のように細かな雨のことをいいます。特に秋に降るもののことを指し、春は「小糠雨(こぬかあめ)」というので使い分けるようにしてくださいね。秋の季語として古くから用いられてきた大和言葉でもあります。
煙るように宙を舞う雨粒でかすんだようになる霧雨の景色は、どこかきれいで物寂しさを感じることでしょう。気象学では、霧雨は雨粒が直径0.5mm以下と定められているので、覚えておくと話のネタになるかもしれませんよ。
誰かの悲しみが降らせているような「涙雨」
「涙雨(なみだあめ)」は悲しい涙が変化して降っているように思われる雨という意味と、ほんの少しだけ降る雨という意味があります。古くから使われている日本語であり、J-POPの歌詞や小説などに今でも使われる美しい表現です。
はらはらと落ちる涙のような雨の情景が、目に浮かびそうなそんな言葉です。自分の気持ちが落ち込んでいるときや、泣きたくても泣けないときに雨が降っていたら「涙雨かな」と思い出してみてくださいね。
晴れているのに雨が降る「天泣」
「天泣」は「てんきゅう」と読み、空が晴れているのにぱらぱらと細かな雨が降ることを言います。「狐の嫁入り」や「天気雨」と同じ意味の言葉です。この現象自体は、雨が降ってくる間に雲が移動したり消えたりするか、風上の雨が運ばれてきているのが原因です。
ただ昔の人が晴れているのに雨が降るその不可思議さを、「天が泣いている」と表現したのは趣深いですよね。そんな状態に遭遇したら、ぜひ話したい雨にまつわるきれいな表現です。
花と雨の組み合わせからきた「発火雨」
発火雨というと物騒な響きに感じますが、「桃の花々に細かな雨が降り注ぐ様子が遠目に見ると火を連想させる」ことからきた美しい言葉です。
24節気の「清明」の頃(4月の初旬から中旬ぐらい)に静かに降る雨のことで、他にも「桃花の雨(とうかのあめ)」や「杏花雨(きょうかう)」とも表現されます。きれいな言葉ですよね。
春の日に咲き誇っている花々にしとしと雨が降っている景色を目にするため、雨でも外に出かけたくなるようなそんな美しい表現です。
さまざまな雨の言葉に派生する「時雨」
「時雨(しぐれ)」も小雨にまつわる言葉の1つ。秋の末から冬の始まりに、通り雨のようにパラパラと降ったりやんだりを繰り返す、小雨を意味しています。時雨が起きることを「時雨る(しぐれる)」ともいいます。
この言葉から派生して「小夜時雨(さよしぐれ)」という夜に急に降る時雨や、「月時雨(つきしぐれ)」という月が出ている夜にさっと雨が降る美しい情景を意味する言葉もあるので、あわせて覚えておくとよいでしょう。
雨を表現する言葉《大雨》
最近では台風以外に予想外の大雨に降られることもよくありますよね。ゲリラ豪雨と新しい表現で話されることも多いですが、日本古来の大雨を意味する言葉もさまざまなものがあるのですよ。
ここではそんな大雨にまつわる日本語の表現について4つご紹介します。普段使わないような耳慣れない言葉もあるので、ぜひ家族や友人に教えてあげてくださいね。
強まったり弱まったりする「村雨」
「村雨」は「むらさめ」と読み、激しい雨と弱い雨を繰り返す通り雨のことを意味する言葉です。和菓子や戦艦、落語や小説などにも使われた言葉なので、聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれませんね。
急に降って止む雨のことをにわか雨といいますが、それと似た意味で、雨が強まったり弱まったりと雨の強さも変化するのが村雨です。他に読み方は同じで「群雨」や「叢雨」と表記することもあるので、覚えておくとよいでしょう。
恐ろしいほど強く降る「鬼雨」
「鬼雨(きう)」というのも、大雨にまつわる表現の日本語です。鬼の仕業かと思ってしまうくらいに強く激しい雨のことで、ゲリラ豪雨の和名にあたります。最近ではよく使う機会のあるゲリラ豪雨ですが、和名があるというのは驚きですよね。
同じ「きう」でも「喜雨」と書く方だと、長い日照りの後にようやく降る雨という意味になります。まさに喜ばれる恵みの雨というニュアンスになるので、耳で聞いたときにはどちらなのか注意が必要です。
雨をとある植物に例えた「篠突く雨」
「篠突く雨」は「しのつくあめ」と読み、こちらも大雨にまつわる言葉の1つです。耳慣れない「篠」ですがこれは竹や笹の1種で、1本1本が細く群生する植物です。その篠が束になって地面を突くように、強く激しく降る雨のことを篠突く雨というのです。
空から降ってくる雨を、植物に例えた趣のある表現ですね。語感的に静かに降る雨と誤解して使っている方もいらっしゃるようなので、気づいたら教えてあげるといいかもしれません。
梅雨明け前の大雨「暴れ梅雨」
梅雨というと、しとしとと雨が降り続くような長雨のイメージですが、実は「暴れ梅雨」という大雨にまつわる表現もあるのです。梅雨の末期は温かく湿った空気が流れ込みこみ、積乱雲となって大雨になります。
このように、梅雨の終わりに強く激しい雨が降ることを暴れ梅雨というのです。他に「荒梅雨」と言われることもあり、また雷を伴う場合は「送り梅雨」ともいわれます。梅雨にまつわる言葉は数多くあるので、興味があれば他の言葉も調べてみてくださいね。