“通訳って案外何してるかわからない仕事”なんだなという発見から二回にわたり書いてきました。通訳という職業をネットで検索すると“ある言語を他の言語に変換し、言語が違う人達の意思疎通を図る仕事”という定義が出てきました。正しくそうです!でもよくわからないですよね。概念的にはそうでも、実際にはどういう仕事なの???という疑問の答えにはならないと思います。

人に何かを説明するときに、“男性なのに女性の服着て、ファッションにも敏感で、歯に着せぬ物言いをする人に会ってさ…”というよりも“IKKO系の人に会って、どんだけ〜”と指でも立ててしまったら、一瞬にしてイメージが伝わるものです。

今回はいろいろな例えを使って通訳という仕事を表現してみたいと思います。今回の内容も前回同様に上谷が独断と偏見で書いたものですので、こういう見方もあるのかくらいで読んでいただけると幸いです。

以前、同通と逐次通訳どっちが大変かという話をしたことがありましたが、柔道に例えると逐次が寝技で同通が立ち技だと思います。みんな一本背負いのような派手な立ち技を練習し、それを試合できまったらかっこいいだろうなとそっちの練習ばかりしますが、寝技がきちんとできない柔道選手は結局立ち技も不安定で見ていて冷や冷やするものです。寝技は地味だし、大変だから嫌がる人も多いですが、寝技の基礎がないと強い柔道家にはなれないように、通訳の基礎である逐次が不安定だと、同通も不安定になってしまいます。駆け出しのころ、今から思うとありえないような仕事をしてきました。フリーランスで1日8時間1人逐次とか普通に受けていました。今なら絶対にそういう仕事は引き受けませんが、当時は通訳者たるものエージェントやクライアントの要求に応えられないのは恥ずかしいことだと思い込んでいたのです。そういう仕事をしないと通訳にはなれないとはいいませんが、逐次の基礎を固める時期をもたないまま同通やウィスパリングを始めてしまうと結局どこかで頭打ちになってしまうのではと思うのです。最近では同通と逐次の仕事が半々くらいになってくると、逆に逐次の難しさや自分のアウトプットのまずさを痛感させられます。結局基本の寝技(逐次)に戻っていくのですね。

通訳をやっているときに気分をどうやって例えればいいかなと考えてみました。 (精神的)アップダウンがあるから“ジェットコースターみたい”という方もいらっしゃいます。確かにそうかもしれません。最近、友人と歌舞伎町で卓球をしたのですが、その時に“このラリーの感じって通訳のときの感覚と同じかも…”って思いました。相手がサーブを打つ、それを自分が返す時に余裕がなく返球だけに終わる場合もあれば、相手の動きを読んで、反対コーナーぎりぎりにスマッシュを決められることもあります。 返球だけの場合は、いい言い回しが思いつかず、とりあえず訳してみました通訳で、コーナーぎりぎりにスマッシュが決まった時は、ぴったりの訳語がずばっと出せた時の感覚と同じだと思います。激しいラリーが、しかもコーナーぎりぎりのところをお互い狙い合うラリーが続いている時の高揚感と面白いように訳語がズバズバ出てくるときの感覚と似ています(←滅多にそんなことはないですが…)。今度テニスや卓球をする機会があり、ラリーになったらこれが通訳者の通訳の感覚か…と思いだしていただけるとうれしいです。

最後は通訳=“芸者 or ホステス”という話で締めくくりたいと思います。フリーランスを始めたころ、エージェントから“前回の通訳者がよかったということで、上谷さん指名で依頼が入っています”と言われ喜んでありがとうございます!と依頼を受けたことを友人に話したら、“指名って芸者とかホステスみたいやな〜”って言われてなるほど!と変に納得したことがありました。確かに通訳もサービス業ですし、芸者が属する置屋(おきや)がエージェント、芸者が芸を披露するお座敷を会議とみれば、通訳の仕事の取り方と非常に似ています。違いがあるとすればフリーランス通訳は複数の置屋(エージェント)に属し仕事をもらっていくという違いくらいではないでしょうか。となると毎夜同じクラブに出勤していくホステスはさしずめ社内通訳?複数の社内通訳者がいる場合、どの通訳がCEOやsenior managementの通訳をするのかで何となく社内の序列ができるのもNo1ホステスを目指してできる序列と似ていると言えるのではないでしょうか。

今回は通訳という仕事を違った例えを使って表現してみました。あくまでも例えですので、全く同じものというわけではありませんが、この例えで少しでも通訳という仕事のイメージが皆さんの中で湧いてクリアになってくれれば幸いです。

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