食べる行為は体験としてすごい濃い
――『恋煮込み愛汁だく大盛り』『涙煮込み愛辛さマシマシ』など、食べ物に関連しているタイトルや食べ物がモチーフとなっている漫画が多いですが、何かこだわりがあるのでしょうか? にくまん子:すごいグルメというわけではないんですけど、もともと食べることが好きで。何かを描こうとする時に、リアリティとか実感とか、五感をどれだけ使って物事を吸収しているかということを大事にしていて。 その延長線上で、食べる行為っていうのは物理的に吸収してるし、体験としてすごい濃いものだから、「あの時悲しかったけどあの夜食べたラーメンとチャーハンはやけに美味しかったな」みたいに、「食」って生きることと切り離せないものなので、無意識に食べ物のタイトルをつけがちなのかもしれないです。
――にくまん子さんの作品に登場する女性は、シズル感があって肉付きもよくてとても美味しそうですね。描く時に何か意識している点はあるのでしょうか?
にくまん子:たぶん、もともとやわらかい線や形が好きなのもあるんですけど、たっぷり!とかどっしり!とかものが満ちている状態が好きなんですね(笑)。なので、女体を描くときにそういうのを重視して描きがちなのかなと。 ふわっとたぎる匂いがしてきそうっていうのは描写として大事にしてるので、そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。
当たり前すぎるところに生活や人生を感じる
――歯茎を舐め回すキスや散らかっている机の上など、生活の中のだらしないところや汚いところをきっちり描かれていますが、あえて意識されているのでしょうか?
にくまん子:個人的には、だらしないところとか、汚いところを積極的に描くぞ!っていう意識は実はあんまりなくて、生活している姿を描こうって思っていたら、こうなってしまったていうのはちょっとあって。 日頃、嫌でも目に入ってくる景色とか音とかテレビの芸人さんの話とか、当たり前すぎて「そんなの描かなくても」っていうようなところに私は生活や人生を感じるので、それを描くことで読んでる方にも気づきがあったらいいなと思って描いてるってとこはあります。
――おならしたり「うんちでた」って報告するシーンもありますね。
にくまん子:みんなそういうのばっかりで生きてるんじゃないのかな?って、私だけだったらめちゃくちゃ恥ずかしいなって思うんですけど(笑)、生きてるからうんちもおしっこもするしなって。 でもそういうので刺さる人がいたらいいなっていう気持ちで描いてます。