図形や漢字の模写で、視覚認知の弱さはチェックできる
では、子どもの視覚認知が弱いかどうかは、どうしたら判別することができるのでしょうか。
「〇×△などの簡単な図形の模写をさせてみたり、同じ漢字を何度か書かせてみたりすると、視覚認知の発達状況を確認することができます。もし、これらが年齢相応にうまくできない場合は、視覚認知の弱さが背景にある可能性もあります。
漢字や図形などを正確に写すことができないと、自分の頭で記憶することはより一層困難になり、その後の学習にも支障をきたしてしまいます」
子どもを守るために親ができること
「やる気がない」とみなされて、放置されやすい
さらなる問題は、認知機能が弱い子は、はたから見ると、“やる気がない”“怠けている”と受け取られやすい点です。結果、学校や家庭で、その認知機能の弱さをなかなか気が付いてもらえないまま、成長してしまうのです。
「学習の土台の弱さを疑ったら、どの認知機能が弱いかを把握し、どうトレーニングすべきかを知ることが重要です。それに合ったトレーニングをしっかりと続ければ、認知機能を改善することは可能です。
たとえば、視覚機能の場合は、点つなぎや模写などを通じてトレーニングを行うことが、機能強化につながります」
ただ、現状では、学習上の困難さから弱い認知機能を把握し、それに対して適切なトレーニングを子どもに提供することは、親や現場の教師たちだけではなかなか難しいため、専門家の適切なアドバイスが重要だとも考えられます。
もしも、自分の子どもに「やっているのに、なぜか点が取れない」「何度教えても、覚えられない」といった傾向がある場合は、認知機能の弱さが原因になっている可能性もあります。そんなときは、「もっとやらさねば」とか「努力が足りない」と考えるほかにも、専門家に相談したり、適切なトレーニングを受けさせたりするなど、早めの対策をとることをお勧めします。
【宮口幸治】 立命館大学産業社会学部教授。京都大学工学部を卒業後、建設コンサルタント会社に勤務。その後、神戸大学医学部を卒業し、児童精神科医として精神科病院や医療少年院、女子少年院などに勤務。医学博士、臨床心理士。2016年より現職。著書『困っている子を見逃すな マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち2』
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