脚本にリアリティを感じにくい原因は…

 このように本作は、現実の社会問題を題材にとりあげていながら、その描き方は現実と乖離(かいり)した状態にあるといえる部分が少なくない。脚本の展開が不自然であることや、リアリティを感じにくい原因は、まさにそこにあるのではないか。そしてその背景には、監督の思想的なこだわりが存在していると思えるのである。

『竜とそばかすの姫』に“違和感アリ”の声。監督の女性観に納得できない
(画像=『女子SPA!』より引用)

『竜とそばかすの姫』は前述したように、様々な分野の才能を借りることで、これまでにない表現を達成することになったのは確かである。しかし、それらの才能が適材適所に割り当てられる一方で、脚本やテーマはいびつなかたちとなって、全体の機能を滞らせている。そしてディズニーの『美女と野獣』のイメージを借りながら、その奥にある、女性の自主性を尊重する先進的な思想には到達することができていない。

現実に痛みを抱える人たちに届いてほしい

 映画は社会と連動し、時代のなかで進化してきている。女性を主人公として、虐待やネットのモラルの低下など、現在のシリアスな社会問題を扱った作品を提供するのならば、より新しい社会観、より明晰(めいせき)な現状認識が必要になるはずである。

 劇中で大きく映し出される、澄みきった夏の青空と湧き上がる入道雲……。その美しい日本の光景が表面的な“美”に終わらずに、現実の社会で実際に痛みとともに生きている人が、未来の希望を重ねて眺められるものであってほしいのだ。

<文/小野寺系> 小野寺系

提供・女子SPA!



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