日本人の平均寿命は、年々伸びています。2019年の男性の平均寿命は81.41年、女性は87.45年となり、約8割の方が公的年金だけでは不足だと考えています。Mさん(56歳女性、会社員)は、老後資金を準備するために終身個人年金保険を活用していますが、内容について、ちょっぴり勘違いしていることに気がつきました。
長生きに備えて終身年金を選ぶことに
Mさんは、40歳のときに、今後は教育費の支出が増えるだろうと考えて再就職され、現在は、ご主人(52歳、自営業)と愛犬と一緒に暮らしています。お子さん二人(28歳、25歳)はすでに独立していますので、老後の蓄えにと昨年、終身個人年金保険に加入されました。
終身個人年金保険は、被保険者が生存している限り、一生涯年金を受け取ることができます。Mさんが加入した終身個人年金保険の内容は、毎月の保険料が5万4,000円、70歳まで保険料を支払い、70歳から毎年年金を約41万円受け取ることができるというものです。Mさんの年金の受取総額が保険料の総額を上回るのは、93歳からとなりますが、長生きをしたときでも安心だろうと考えて加入することにされたそうです。
払い込んだ保険料は全額受け取れないことも
生きている限りずっと年金を受け取ることができると加入した終身個人年金保険ですが、最近になって、内容について一部勘違いをしていたことに気づいたそうです。年金の受け取りが開始して早い時期に亡くなったときは、支払った保険料のうちのまだ受け取っていない金額は、全額ご主人やお子さんたちに支払われると思っていたのでした。
Mさんが加入した終身年金保険は、“10年保証期間付終身年金”という商品です。これは、年金支払開始日以降10年間を保証期間とし、保証期間中の最終の年金支払日より前に被保険者が亡くなった場合に限り、保証期間内の残りの年金を受け取ることができるということを意味しています。したがって、Mさんの場合は、払い込んだ保険料総額の約972万円のうち、約410万円の受け取りが保証されているということになります。
もちろん、長生きをすればずっと年金を受け取ることができ、100歳まで生存すれば受け取る年金額総額は1,273万4,800円、返還率は131.0%と大幅に増えた年金を受け取れます。しかし、10年間の保証期間終了後は、被保険者が亡くなると年金の支払いは終了します。
年金受取開始前なら確定年金に変更もできる
Mさんのご主人様は、厚生年金に加入していた期間が12年、将来受け取れる公的年金は二人合わせて月額21万円です。終身個人年金保険は公的年金の不足額を補うために加入したものでした。もしもMさんが、保証期間以降の早い時期に亡くなった場合は、ご主人様の受け取る年金額は約11万円となります。
心配になったMさんは、保険会社に保証期間について確認するために問い合わせをしたところ、現在の契約内容のまま年金の受け取り方法を10年確定年金に変更できることがわかりました。5年、10年、15年から選ぶことができ、10年確定年金の場合、年金額は毎年約101万円、10年間の年金受取総額は1,013万7,000円、返還率は104.2%です。
Mさんが長生きをしても受け取る年金額は変わりませんが、確定年金を選択することで支払った保険料総額は数%増額されて受け取れます。また、被保険者が年金支払期間の最終の年金支払日より前に亡くなったときは、まだ受け取っていない年金額を一括か年金で受け取れます。年金の支払い開始前なら、所定の要件を満たす場合は年金の種類の変更が可能だということでした。
自分で備えておくことも大切
Mさんご夫婦が、老後資金が足りるかご心配になる場合は、一部をiDeCoやNISAなどを活用して運用するのはいかがでしょうか?こちらも税制面でメリットが受けられます。また、定期預金は普通預金より金利が高くなっていますし、公的年金を受け取る年齢を繰り下げると、最大で42%も年金額を増やすことができます。
個人年金保険は、老後の生活を支えるための私的年金の一つです。そのほかにも老後資金について活用できる制度がありますから、確認して今から備えておきましょう。
文・藤原洋子
所属・FP dream代表
生命保険会社で営業職を経験し、AFP資格を取得。現在は、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、執筆、相談、セミナーを通して活動しています。
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