“モラハラ専門弁護士”の脅し
ここで、小林さんが現在も争っている最中だというXという名の弁護士が登場する。
「X弁護士と妻がどこで出会ったのか、どちらがどういう方法でアプローチしたのかはわかりません。ただはっきりしているのは、X弁護士は自らを“モラハラ専門弁護士”として名を上げるため、初美を利用したということです。彼女は完全に、広告塔にされました」
X弁護士はまず、初美さんの持っていた小林さんの会社の経理書類に目をつけた。会社の決算前に経理書類が戻らないと、会社は罰則を受けることになる。それを狙ったひどい嫌がらせだった。申立人はX弁護士本人、初美さんの名前はどこにもない。
しかもX弁護士は初美さんに、「徹さんがあなたを、経理書類を持ち逃げしたとして警察に突きだそうとしている」と虚偽の説明していた。
「経理書類の件はでっち上げだったので、大事に至らず収束しました。しかしこの頃から、X弁護士は初美に、モラハラ事例を告発する“作品”を、ネット上で書かせるようになったんです」
その“作品”に小林さんの実名は出ていないものの、“夫からの被害”を想起させるには十分の内容だった。
「X弁護士は、初美に“作品”を発表させているのはトラウマ治療の一環だと言っていましたが、それはありえません。津波の被害に遭った方に、津波についての物語を書けと言っているのと同じです。暴露療法という方法もあるにはありますが、それは専門医師による監視下で、慎重を期す必要がある。ネットで公開して本人に拡散させるなど、とんでもない。やり方がまったく違うんです」
大学で心理学を専門に学んでいただけに、説得力がある。
「彼は、僕のモラハラで初美がPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったとも言っていましたが、本当にPTSDなら、僕との夫婦生活を想起させるような“作品”なんて書けるわけがありません。嘘ばかりです」
モラハラ被害の講演も
しかも初美さんは、“自らのモラハラ被害”について頻繁に講演しているという。
「X弁護士は初美を登壇者にかつぎあげてセミナーを開き、モラハラをテーマにした講演活動をさせているんですが、初美のしゃべる体験談はX弁護士による捏造(ねつぞう)です。彼が作り上げた偽の体験を、初美に信じ込ませている」
X弁護士のしていることは完全にアウトだが、初美さんが委任関係を続けている以上、X弁護士はすべて初美さんの指示で動いていることにできてしまうので、いかんともしがたい。小林さんは弁護士会に相談した。
「第三者の力を借りてでも初美とX弁護士を引き離したほうがいい、とアドバイスされました。ただ、彼女は数少ない仲の良かった友達とも関係が断たれているので、それも難しい」
初美さんを完全に囲い込んだX弁護士は、その後、小林さんを相手に離婚裁判を起こしてきた。裁判は現在も進行中である。