GWを過ぎると「冷やし中華始めました」という張り紙が目につくようになる。しかし、イケてる店はもうとっくに始めていた。ツルッとノドごし最高の「イケ麺」あります!
年々開始が早くなる夏の定番料理
夏が近づくとアイツが恋しくなる。冷水で締められ、グッとコシを増した中華麺に、甘酸っぱいタレをかけた「クール」なアイツ。
町中華やラーメン店に「冷やし中華始めました」の短冊が目につくようになるのは、早くてGW明け、大方の店は6月頃がメドとなるが、もうとっくに始めている店もあるのだ。
今年3月に“始めちゃった”のは御茶ノ水にある「味の萬楽」だ。創業は明治45(1912)年と、今年で創業110年目、現存する中華そば店としては、国内最古とも言われる老舗だ。
GW前に冷やし中華始めちゃいました!
細切りのチャーシューにキュウリ、もやしが山形に盛られ、天の錦糸卵と紅生姜の彩りが食欲をそそる。「ピーク時には注文の8割が冷やし中華ということも」あるほど熱烈なファンも多い逸品だが、なぜ今年はこんなに早く解禁を?
「ウチは冷やし中華の開始時期を気温で見るんです。向こう2週間の天気予報を見て、最高気温が20℃を超えそうな週があったら、前の週の日曜日に家族会議をして冷やし中華を始める日を決定します。今年の『冷やし中華家族会議』は3月21日でした(笑)」(女将の古室真由実さん)
通常の中華そばと冷やし中華では仕入れる材料も大きく変わる。温かいラーメンではチャーシューはバラ肉を使うが、冷やし中華は脂少なめの肩ロース。もやしやタレに使う酢の使用量も跳ね上がるし、醬油さえも中華そばとは違うものを使っている。
「時期によって味も変えています。はしりの時期は酸味も控えて、薄く甘いタレですが、盛夏には酸味をグッと前に出します。ただ、お酢だけ増やすと酸っぱくなってしまう。同時に甘味も強くしてバランスを取っています」
古室さんが店を継いだのは10年前。「家業を継ぐために生まれてきた」と言うほど家業に思い入れがあった。幼少時から父の振った鍋の残りを舐めて味を覚えたという。家政系の短大を卒業後、複数の飲食チェーンを渡り歩き、10年前に満を持して店を継いだ。
「レシピは教えてもらっていませんが、父の味を知る人からも『変わらないね』と言ってもらえます」
ときどきで世間の舌は変わる。
「変わらない」と言われるためには変化が必要だ。「味の萬楽」には進化する“懐かしの味”がある。
味の萬楽の「冷やし中華」 チャーシュー、キュウリのほか、裏側にはもやしもどっさり。冷やし中華は「秋のお彼岸頃まで」。気温に応じてタレの味が変わる。冷やし中華に温かいラーメンスープがつくのも嬉しい(950円)