アトムからビットへ

財産権などの価値を、なんらかのモノに記録しないと取引できないのは確かであるが、そのモノは紙などの物質(アトム)である必然性はない。

その発生・譲渡・保管のしやすさが紙などと同様に確からしいのであれば、情報(ビット)に記録して、その情報を取引することとしても、実際の取引においては何ら支障はない。

そして、前述の通り市場で取引されているのは実際には情報であり、法律上その情報を有価証券と呼んでいるに過ぎない。

であれば、正面から「有価証『券』」という概念をなくし、「有価証『情報』」を取引すると認めてもよいのではないか? ここで、やっとFinTechの出番である。

FinTechはすべてを壊す

例えば、「株『券』」という概念をなくし、株式そのものを直接取引すると法律上定義しても、実は誰も困らない。

今までは、「株『券』」という“モノ”がないと、株式という目に見えない株式会社の社員権が売買できなかっただけであり、今では幸いなことにブロックチェーンに見られる、リアルタイムな取引記録を参加者全員が参照できる仕組みがある。

「株『券』」がなくとも、ブロックチェーン上で株式を直接売買することは十分可能である。

そうすれば、1株式を取引することが可能となり、より少額の金額で株式投資が可能となり、投資家にとってメリットが大きい。

企業にとっても、ブロックチェーンを使い、株式上場対応コストが低額で済むのであれば、反対する理由はない。株主名簿にしても、ブロックチェーンを使えば、実際には毎日でも確定は可能である。

半年に一度株主名簿を確定するという現在のやり方は、紙と手と人の足しかなく、株主を確定させるのが大変だった時代の方法を現在に残しているだけであり、従わなければならない必然性はどこにもない。

投資信託にしても、現在は投資信託の組成・販売のコスト面の必要から、最低売買代金が1万円からとなっているものがまだ多いが、ブロックチェーンを用いて、受益者情報の確定が瞬時に行えるようになれば、それこそ1口単位から販売することは可能になるだろう。

そして、ブロックチェーンを利用した決済期間の短縮化が進み、T+0(取引したその日に資金の受け渡しがなされること)が実現され、併せて証券会社から銀行への即時入出金が実現されれば、現在我々が見ている有価証券取引は、ガラリとその姿を変える。その時に、現在の証券会社、証券取引所、その他の市場関係者は、今のままの姿では生き残ることはできない。

FinTechはすべてを壊すのである。

文・三根公博(マネックス証券執行役員)/ZUU online

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