女性の転機②:配偶者の転勤

(写真=VGstockstudio/Shutterstock.com)

夫の転勤で妻が退職せざるを得ない

会社員が転勤を命じられるとき、その配偶者もまた決断を迫られます。

『転勤・異動・定年の実態とそのインプリケーション-RIETI「平成29年度転勤・異動・定年に関するインターネット調査」報告』(鶴光太郎ほか、独立行政法人経済産業研究所、2018年)によると、転勤によって配偶者が仕事を辞めた割合は30代で24.8%です。

この調査のサンプルは、30代男性が76.3%ということから見て、結果はほぼ「妻が仕事を辞めた割合」と考えて差し支えないでしょう。厚生労働省「平成28年度雇用動向調査結果」(2016年)によれば、同年の全体の離職率は15.0%ですから、それと比べても高い値です。

ハイスペ女子×ハイスペ男子の結婚で起きること

『「育休世代」のジレンマ-女性活用はなぜ失敗するのか?』(中野円佳著、光文社、2014年)は、仕事に燃えていたはずのバリキャリ女性が出産や育児をきっかけに仕事を辞めてしまう、その背景に何があるのかを分析した本です。その中で夫の転勤を機に退職を決意した女性の例を紹介しています。

そこで語られたのは、バリキャリ女性の気持ちがぷっつりと切れてしまう過程。意気込んで働いていた女性が出産を機に「誰もやらなくていいような仕事」が回ってくるようになり、さらに夫の転勤が決まって自分の異動も掛け合ったけれど人事部から前向きな反応が得られず、「そこまで必要とされていないのでは」とやりがいを失うに至ります。

この本では、仕事をバリバリ頑張りたいハイスペ女子ほど、同じようにバリバリ仕事をするハイスぺ男子と結婚してしまい、その結果、結婚後に自分の理想とする「男並み」の働き方ができなくなり、挫折して辞めてしまうパラドクスが解き明かされます。

「無限定な正社員」を前提としている日本企業

『多様な正社員の働き方の実態-RIETI「平成26年度正社員・非正社員の多様な働き方と意識に関するWeb調査」の分析結果より』(鶴光太郎ほか、独立行政法人経済産業研究所、2016年)は、「これまでの日本企業の組織運営は、いわゆる正社員の働きを前提としてきた」と述べています。

そして、その「無限定な正社員」のモデルにより発展してきた日本企業には、多様な労働力を活用する制度や慣習が十分に整っていないと指摘しています。

女性もまたこの無限定な社員として働いてきたわけですが、結婚して配偶者と自分の無限定な働き方が両立できなくなったとき、結局は女性が働き方を変えざるを得ない状況が存在するのです。