月に一度やってくる生理。2〜3カ月に一度しか来ない状態を生理不順、3カ月以上生理が来ない状態を「無月経」といいます。とくに無月経を放置していると、骨粗鬆症リスクや子宮体がんリスクが高まるため、産婦人科を受診してほしい。自身も生理不順を抱える、産婦人科医・稲葉可奈子さんによるコラムです。
皆さんは「生理」(※1)とどんな付き合い方をしていますか?
毎月やってくる、ちょっと煩わしいけど、でも来ないと不安になる――そんな存在と思っている女性が多いのではないでしょうか。「生理不順」で産婦人科医を受診される方は結構いらっしゃいます。皆さん真面目で、中には1日でもずれると心配で受診される方も。
私は産婦人科医ですが、実はすごい生理不順です。初潮からしばらく、10代の間は誰しもまだ周期が安定しないことが多いですが、私の場合は大人になってからも生理が不順です。でも、2〜3カ月ごとに生理が来れば、特に治療をすることはありません。
えっ、それでいいの? 医者としてどうなの? と思われた方に、目からウロコの話と、これだけは気をつけて、というお話をしたいと思います。
※1 医学用語では「月経」ですが、「生理」のほうが聞き慣れている方が多いと思いますので、今回はあえて「生理」と表記します。
■生理のつらさを我慢しないで
産婦人科医になって、世の女性の多くは、毎月きっちり生理が来ているのを知って、逆にビックリしました。
しかも、生理の量が多くて(過多月経)すごく困っている人も、生理痛がすごく強くて困っている人も、毎月毎月我慢してらっしゃる。本当に、日本には真面目で我慢強い女性が多いように思います。
でも、実は、生理は毎月来ないといけないものではないのです。生理痛も過多月経も我慢しないといけないものではないのです。
産婦人科医として、女性を生理の苦痛から解放したい! と日々思っています。
過多月経も生理痛も、検査や治療で改善できるので、毎月つらい思いをして我慢しているという方はぜひ一度受診してください。
そもそも生理で起きる出血は、妊娠するために毎月排卵して、着床に備えて子宮の内膜が厚くなるにもかかわらず妊娠しないと、その内膜が剥がれ落ちるというものです。
妊娠を希望しているわけでなければ、生理は必ずしも毎月必要なものではありません。ストレスや体調不良などで生理周期がずれるのも珍しくないことです。
生理痛がひどい方にはあえて薬(低用量ピル)を飲んでもらい、生理を数カ月ごとに1回来るようにと、回数を減らす場合もあります。
■放置してはいけない無月経とは
生理周期が少々不順になる程度であれば、あまり心配いらないことが多いのですが、もともと生理があるにもかかわらず、生理が3カ月以上来ない「無月経」(※2)は放っておかずに産婦人科を受診してください。
私は本当にすごい生理不順ではあるものの、自分が産婦人科医で医学的知識があるので、特に不安になることもなく、「むしろたまにしか来ないから楽」くらいにポジティブにとらえています。ただ、いつ来るかわからないというのはデメリットではあります。
私のようにもともと生理が不順な方は、「そんなもん」と思っていらっしゃる方が多くて、「半年ぶりくらいに生理が来ました~」とケロッとおっしゃったりします。慣れって怖いですね……。
一方で、これまで生理不順ではなかったのに、突然生理周期が乱れたという理由で受診される方は、皆さん不安を持たれて受診されます。生理を健康のバロメーターのひとつ、としていらっしゃるのだと思います。
生理は毎月来ないといけないものではありませんが、生理がたまにしか来ない方は、一度は受診して原因を調べておきましょう。
女性ホルモンであるエストロゲン(※3)の不足によって骨粗鬆症のリスクが高まることがあります。同じく女性ホルモンのプロゲステロン(※4)分泌を伴わずに、エストロゲンが持続的に作用していると、子宮体がんのリスクが高まるので、無月経は決して放置せずに婦人科を受診してください。
患者さんの中には、もともと生理不順で「しばらく生理が来てないなあ」くらいに思って受診していなかった方が、受診された時にはすでに妊娠8カ月だった、というケースもありました。妊婦検診を受けていないと、母体や赤ちゃんにもし異常があっても、見逃してしまいかねません。
また別のケースでは、無月経が続いている20代の方で、ホルモン値を検査すると、女性ホルモンがほとんど分泌されておらず、『早発卵巣不全』の状態で、ホルモン補充療法が必要でした。
妊娠や治療が必要な病気を見逃さないためにも、3カ月以上生理が来ない場合は一度は受診してみましょう。
※2 無月経には、生まれつき生理がこない「原発性無月経」(満18歳になっても初潮が来ないこと)と、それまで生理が来ていたのに、あるときから生理が止まってしまう「続発性無月経」とありますが、今回は「続発性無月経」について取り上げています。
※3 卵巣から分泌されるホルモンで、生理の周期ごとに分泌量の増減を繰り返します。女性ならではの体のまるみや、肌のうるおいを給ったり、丈夫な骨を維持するなど、様々な働きをしています。
※4 排卵後に分泌されるホルモンで、子宮内膜をふかふかにして妊娠の準備を整えますが、妊娠しないと約2週間で分泌量は減少し、子宮内膜は剥がれ落ちて生理となります。
■生理がきちんと来ない……妊娠を望むなら産婦人科で診てもらって
さて、生理とはそんなにカッチリしたお付き合いじゃなくて良いですよ、とお話ししましたが、妊娠の可能性があって生理が遅れている方は、妊娠反応検査を必ず行ってください。妊娠の可能性があるというのは、ここ最近性交渉した方であれば当てはまります。
さほど心配する必要のない生理不順であっても、妊娠を希望している方は、いつが排卵かわかりづらくなってしまうので、産婦人科を受診することをおすすめします。
私はもともとかなりの生理不順だったのと、長らく授乳していたこともあり、産後、なかなか生理が戻りませんでした。
産後、生理の戻りが遅くて不安に思われている方は少なくないと思いますが、育児に追われて自分のことはついつい後回しになってしまいがちです。
授乳していて生理がなかなか戻らないというのは理に適っているので、必ずしもすぐに受診する必要はないですが、ふたり目の妊活を早めにしたい方は受診して相談してくださいね。
女性が閉経まで付き合っていかないといけない生理。妊娠するためには必要ですが、それ以外のときには必ずしもなくてはならないものではありません。
生理のために生活が制限されることがないように、生理でなにかしら困ってらっしゃる方は、気軽に産婦人科を受診して、相談してみてください。そして、生理がまったく来ない「無月経」は放っておかないでほしいです。
今の女性は社会でも家庭でも必要とされて、とても忙しい日々を送っていると思いますが、自分の体を労ってあげてください。
■こんな症状があるときは婦人科を受診して
妊娠の可能性がある場合は、生理が1週間遅れたら妊娠検査薬で妊娠していないかどうか確認しましょう。陽性の場合は受診を、陰性の場合はすぐに受診する必要はありませんが、生理が3カ月来なければ受診してください。
妊娠の可能性がない場合は、生理が3カ月来なければ受診しましょう。
無月経というほどではないけれど、不順な生理周期を整えたい、妊娠を希望している、という方もぜひ一度産婦人科でご相談ください。
Text/稲葉可奈子
医師・医学博士・産婦人科専門医・予防医療普及協会顧問
2008年京都大学医学部卒業、京都大学医学部附属病院での初期研修ののち、産婦人科へ進路を決め、東京大学医学部附属病院、三井記念病院を経て、東京大学大学院にて医学博士号を取得。現在、関東中央病院産婦人科に勤務、二児の母。
提供・DRESS(「人生を守る知恵、未来を歩く地図」となる言葉や人物、文化を伝えるウェブメディア)
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