掛け捨てかお金が貯まるタイプか、生命保険に入るならどちらがいいのでしょう。実はそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが合うかは人によって違います。自分に合った方を選べるよう解説していきます。

掛け捨て型保険と貯蓄型保険の比較表

掛け捨て型保険と貯蓄型保険、大きな違いは以下のとおりです。
 

メリット デメリット
掛け捨て型 ・保険料が安い ・お金が貯まらない
(解約返戻金や満期保険金がない)
貯蓄型 ・お金が貯まる
(解約返戻金や満期保険金がある)
・保険料が高い
・途中で解約すると元本割れする

さらに詳しく見ていきましょう。

掛け捨て型の生命保険とは

掛け捨て型とは、解約返戻金や満期保険金がない(あったとしてもごくわずかな)保険のことです。代表的な掛け捨て型保険には、死亡した場合の保険金を一定の期間だけ用意できる定期保険、働けなくなったときに役立つ収入保障保険などがあります。医療保険やがん保険も、一部掛け捨てではないタイプもありますが掛け捨て型の方が主流になっています。

掛け捨て型保険のメリット・デメリット

掛け捨て型保険のメリットとデメリットを確認しておきましょう。

掛け捨て型のメリット

・貯蓄型よりも保険料が抑えられる
掛け捨て型は、解約返戻金や満期保険金などがないシンプルな保険です。そのため、貯蓄型に比べて保険料が手ごろなのが特徴です。

生命保険(死亡保険)の保険料は、保険金額が同じ場合、掛け捨て型なら月1,000円、貯蓄型なら月1万円と桁が1つ違うこともあります。

まだ小さいお子さんがいるご家庭や、養うべき家族が多いご家庭など、もしものときに受け取れる保険金額を大きくしておきたい場合でも、貯蓄型の保険ほどコストがかさまずに済みます。

・柔軟に見直しができる
掛け捨て型には、解約返戻金や満期保険金がありません。そのため、契約期間の途中で解約したからといって、貯蓄型のような「受け取れるお金が極端に少なくなる」といったデメリットはありません。

生活環境が変わったり、ほかにもっと条件の良い保険を見つけたりしたときに、すぐに見直しができます。

加入期間が「〇年間」「〇歳まで」などと区切られている保険も多いため、手厚い補償が必要な一定期間だけ既存の保険に追加して加入しておくといった使い方もしやすいです。

掛け捨て型のデメリット

・もしものときの保障「しか」ない
掛け捨て型には、「解約返戻金」や「満期保険金」といった保険料を支払い続けることで積み立てられていくお金がほぼありません。そのため、貯蓄型のように「貯金代わり」や「資産運用」といった目的で利用することはできません。

あくまで「もしものことが起きた場合に保険金を受け取れる」という機能しかないことを覚えておきましょう。

掛け捨て型保険の保険料は、保険期間中に何かあったときに金銭的に困らないようにするために支払うものです。もちろん意味はあるのですが、「掛け捨て」という言葉のイメージから「保険期間中に何も起こらなかったら無駄だ」と思い、「掛け捨て保険は嫌」と感じる方もいるようです。

・契約期間に注意が必要
保障される期間が区切られている保険も多いので、一生涯の安心を手に入れたい方にとっては注意が必要です。

老後、体が弱ってきてこれから医療費もかさんでくるかもしれないというタイミングで保険が切れてしまったり、数年おきに自動更新され、そのたびにどんどん保険料が上がり、支払えなくなってしまったりするケースもあります。

医療保険やがん保険では、掛け捨てでも一生涯同じ保険料で加入し続けられるタイプも選べます。保険期間や更新についての項目は契約前によく確認しておきましょう。

掛け捨て型保険に向いている人は?

掛け捨て型保険をおすすめしたいのは、以下のような方です。

月々の保険料をなるべく抑えたい人

将来お金に困ることがないように保険に入っているのに、その保険料の支払いで今の生活が圧迫されて家計が苦しいというのは本末転倒です。

貯蓄型は保険料が比較的高い上に、途中でやめると損をしてしまいます。

収入が少ない方、お子さんが多く支出が多い方、今後転職や独立などを予定していて収入が減る可能性がある方などは、掛け捨てのほうが毎月の負担が少なく見直しも容易なので、おすすめです。

貯金や投資は自分で取り組めるという人

今は低金利時代で、貯蓄型でも昔ほどはお金が増えなくなっています。掛け捨て型の保険には貯金や資産運用といった効果はありませんが、その分保険料は抑えられます。

貯金や投資を自分で取り組める方は、わざわざ高い保険料を支払って長年お金の使い道を固定されるような貯蓄型を選ぶよりも、保険料が浮いた分を貯金でも投資でも自分の好きなところに好きなように使える掛け捨て型を選ぶほうが、合理的かもしれませんね。

子どもが成長するまでなど一定の期間だけ手厚い補償を用意したい人

高額な保険金をかけても貯蓄型ほど保険料が高くならないため、小さいお子さんがいるなど、今だけはしっかり備えておきたいという方にも向いています。

貯蓄型保険とは

貯蓄型保険は、掛け捨てのように保険料を払ったきりではなく、支払った保険料や期間に応じて解約時や満期時にお金が受け取れます。

一定の時期まで待てばそれまで支払った保険料と同等か運用されて少し増えた金額を受け取れることが多く、積立貯金のようなイメージで捉えられるため「貯蓄型」や「積立型」と呼ばれています。

貯蓄型保険の種類としては、死亡した場合の保険金を一生涯に渡って用意できる「終身保険」、亡くなった場合も設定した時期まで生きていた場合も同額の保険金がもらえる「養老保険」、子どもの学費を工面するために使われる「学資保険」、積み立てたお金を老後に少しずつ受け取れる「個人年金保険」などがあります。

貯蓄型保険のメリット・デメリット

貯蓄型保険にも、メリットとデメリットがあります。

貯蓄型保険のメリット

・貯金や資産運用を目的とした使い方もできる
満期を迎えるか一定期間後に解約した場合に、満期保険金や解約返戻金としてまとまったお金を受け取れるのが貯蓄型の大きなメリットです。

自分が支払った保険料は積み立てられ、保険会社が投資のプロに任せて適切に増えるよう運用されています。保険によっては、支払った保険料の総額よりも受け取る解約返戻金のほうが多いものもあるので、「毎月保険料が引き落としされていて、ほったらかしの状態でも気付いたらお金が増えていた」ということもあり得ます。

・契約者貸付を受けられることも
保険金を請求するような事態でなくても、緊急で多額のお金が必要になり困ることがあるかもしれません。そんなとき、貯蓄型の保険なら解約返戻金の一定範囲でお金を借りることができます。

保険を解約することなくお金を借りられますし、銀行で借りる場合と違って審査がないため早く入金され、金利も低めに設定されるケースが多いです。新型コロナウイルスのときは、契約者貸付を金利0%(無金利)で行うという救済措置を取った生命保険会社も多くありました。

このように、保険金を請求するような事態が起こらなかったとしても役に立つのが貯蓄型のメリットと言えます。

貯蓄型のデメリット

・掛け捨て型に比べて保険料が高額になりがち
貯蓄型の保険は解約返戻金などが受け取れるようになっている分、それがない掛け捨て型よりも保険料は高くなります。

前述のとおり、掛け捨て型だと月1,000円で済むところが貯蓄型だと月1万円ということもありますので、その差をどう考えるかで掛け捨て型と貯蓄型のどちらを選ぶかが変わるのではないでしょうか。一度両方の保険料の見積もりを取って、比較して考えるといいでしょう。

・途中で解約すると元本割れする
保険料の払い込み完了や満期を迎える前に金銭的に困ったりして解約してしまうと、今まで支払ってきた保険料総額より少ない金額の解約返戻金しか受け取ることができません。早期に解約するほど損なので解約しにくいという特徴があります。

解約しにくいということは、途中で人生設計が大きく変わったとしても見直しにくいというデメリットをはらんでいます。ただ、銀行預金のように簡単に下ろせず半強制的に貯まるしくみづくりができるので、貯金が苦手な方にとってはメリットとも取れるでしょう。

貯蓄型保険に向いている人は? 

貯蓄型保険に向いているのは、以下のような方です。

貯金や投資はしたいけど、自分でするのは苦手という人 

貯蓄型保険は一度契約すれば毎月保険料を引かれて積み立てられるので、自動的に「先取り貯金」や「財形貯蓄」のような仕組みを作ることができ、さらに保険によっては払った額以上の金額が受け取れます。

自分ではなかなか貯金や投資ができないという人でもほったらかしでお金が増やせる可能性があります。

保険料が比較的高額でも支払い続けられる人

繰り返しになりますが、貯蓄型の保険を途中で解約してしまうのはもったいないことです。

自動振替貸付や払い済み保険など、解約しなくても済むような仕組みが用意されている保険会社もありますが、それでもどうにもできない場合は、頑張って高い保険料を払っていたとしても、最終的に受け取れる金額は少なくなってしまいます。

契約してからの期間が短ければ短いほど損になるので、貯蓄型を選ぶときは「転職などで収入が大きく減るようなことはないか」「子どもが大きくなって教育費の負担が増してきても払い続けられるか」といった長期的な視野に立って判断するようにしましょう。

生命保険はライフステージや目的に応じて選ぼう

掛け捨て型と貯蓄型、なにもどちらか一方に絞らないといけないわけではありません。掛け捨て型保険と貯蓄型保険の特徴を兼ね備えた商品も存在しますし、考えた結果不要だと思えばどちらにも入らないという選択肢もあるでしょう。

それぞれのメリット・デメリットを比較したうえで、自分や家族の年齢、経済状況、備えるべきリスク、お金に対する考え方など、さまざまな観点から判断して、自分にぴったり合う方法を選びましょう。
 
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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