印鑑の重要性の核心は法的効力?

印鑑がこれだけ重要視されてきた事情も見ておこう。もともと印鑑は紀元前5500年頃、古代メソポタミア文明に誕生したと言われている。中東地域から地中海沿岸のギリシャ、ローマを経てヨーロッパに広がり、アジアでは古代中国を経て日本に伝わったとされている。

最も象徴的なのは、日本最古の印鑑といわれる「漢委奴国王印」の金印だろう。社会科の教科書にも登場する、その金印を筆頭に、701年の大宝律令の制定時に官印が導入され、公文書の証明に利用されていたという。現代の日本でも官公庁や民間のビジネスでの書類作成や組織内での稟議書の承認に使われるなど、印鑑は大活躍中だともいえる。

また印鑑が重視される背景には、制度的な裏付けもありそうだ。法的根拠として、民事訴訟法は第228条4項でも「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と定めていることから、真正な契約だと証明する効果が重視されている事情もありそうだ。さらに、「有印私文書偽造」や「有印公文書偽造」は犯罪とされている。

言い換えれば、実際の裁判では押印は契約の有無、義務や責任の有無を示す重要な証拠とされており、判例でも印影(印鑑の印)が本人の印章(印鑑)による場合は本人の意思に基づいたものであり、契約の締結も本人の意思に基づくと推定されるため、印鑑には重要な地位が認められていると言えそうだ。

他方で、ビジネスの現場では口約束やサインでも契約は成立する。口約束でも契約の法的拘束力を認めた判例が存在するだけでなく、電子印鑑の普及を後押しする動きもあり、従来の印鑑だけが絶対的な法的効力を持つわけではない。

「由緒正しい」ともいえる日本の印鑑文化は、りそな銀行の取り組みをきっかけに変わっていくのだろうか。今後の趨勢を慎重に見守るのも、おもしろそうだ。

文・ZUU online 編集部/ZUU online

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