養育費を払わない彼【ケース2】:「新しい家庭ができたから」

(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

年収800万円以上の離別父親も半数は養育費を払わない

労働政策研究・研修機構の周燕飛氏は研究報告書の中で、年収800万円以上の高所得層の父親でも約半数が養育費を支払っていないことや、支払っていても平均額が月6万円前後と年収の多さに比べて低いことなどを問題視しています(労働政策研究報告書『シングルマザーの就業と経済的自立』労働政策研究・研修機構、2012年)。

関連コラムで周氏は、十分な経済力を持つ離別父親の養育費不払いは、再婚による新しい家族の養育責任を優先することが大きな要因であろうと推測しています。その背景として挙げているのが、離別父親の59.1%が再婚し、年収の高い層に偏っているという千葉大学法政経学部・大石亜希子氏の調査結果(※)です。

※『離別男性の生活実態と養育費』(大石亜希子、2012年)西村周三監修、国立社会保障・人口問題研究所編『日本社会の生活不安-自助・共助・公助の新たなかたち』慶応義塾大学出版会、pp.221-246

彼の「優先順位」はどこにあるのか

養育費の支払いを追及することが難しいとされる年収ラインは200万円、月収にして14万円程度という算定があります。収入に十分な余裕のある男性の場合、経済的な困難から支払いが不能になっているわけではありませんから、要するにその男性がどのように支出の優先順位をつけているかという問題なのでしょう。

このような男性と付き合っている場合、彼と再婚したら、離婚した元妻との子供よりあなたとの新しい家庭の方が優先される可能性が高いということです。しかし、これは手放しで喜んでいいことなのでしょうか。あなたは、この先も自分の家庭が彼の優先順位の上位にあると確信できますか?

検討事項:彼の支出とその配分は?

あなたの彼が十分な収入を得ているにもかかわらず養育費を払っていない場合、彼の収入よりも支出に目を向けてみましょう。月々の支出先はどこか、それぞれの支出額の配分割合はどうなっているか。どこに支出を惜しまないのか、苦しいときはどこに対する支払いを遅らせ、何に対する支出を削るのか、観察してみましょう。それが彼の優先順位です。

私見ですが、自分の子供に対する責任と義務の優先順位を落とすことのできる人は、結局は他人である新しい妻への優先度に関しても盤石でないのでは?と思います。

ちなみに、筆者の元夫は前妻との子供に月々養育費を払っていましたが、いつもその他の支払いの後でした。他の支払いを優先し、足りなくなれば養育費を半月、1カ月と遅らせ、しまいには払わなくなりました。そんな彼がいちばん後回しにした支払いは、彼が経営する事業で一緒に働いていた配偶者である筆者への給与です。

養育費の優先度が低いことは、「今後は新しい家庭を大事にしていく」気持ちの表れとは言い切れないでしょう。優先順位は入れ替わります。つまるところ、将来あなたと彼との仲がそれほどハートウォーミングなものでなくなったときの彼の姿を、今そこに見ているということなのではないでしょうか。