【3】自分のことを好きでなくてもいい、と思えるようになった

とにかく自尊感情の低い僕。「自己肯定感」という言葉が巷に広まるようになった頃から、もっと自分を好きにならなきゃ、もっと自分を認めてあげなきゃ、と暗示をかけ続けていました。

その結果、どうなったか。余計にしんどくなった。

自分のことを好きになろうと言って好きになれるぐらいなら、こんな何十年もこじらせ男子をやっていない。むしろ好きになりたいのに好きになれなくて、どんどん自分の嫌なところばかり目について、自己肯定感が自家中毒を起こしてる。

そんな中、推しができて分かったんですけど、僕、自分が褒められるより、推しが褒められる方が何十倍もうれしいタイプ。

自分のことを褒めてもらうと、もちろんありがたいとは思うのですが、それと同時に「いやいや、自分なんて鼻クソ以下なんで」と相手が返答に困るレベルで強烈に自分を卑下してしまうし、「褒められたからって調子に乗るべからず」と謎の鬼コーチが木刀を振ってくる。

挙げ句の果てには「こんな褒めてくれた人を、いつかがっかりさせるようなことをしてしまったらどうしよう」とまだ起きてもいないネガティブな状況を勝手に想像して恐怖に震える始末。

一回の褒め言葉に対して起きる感情の情報量が多過ぎて、僕がMacなら確実に虹色のカーソルがクルクルまわってる。

推しとは何か 横川良明

一方、推しが第三者から褒められるとシンプルにうれしい。「ありがとう!」って本人でもないのにお礼を言い、「やろ?」って関係者ヅラでドヤってしまい、「ちなみにこの作品ではね」と頼まれてもいないのに別作品をあつかましくも布教する。

自分が褒められると挙動不審になりますが、推しが褒められると純粋にホクホクするし、気持ちが満たされる。そして気づくのです。無理に自分を好きにならなくてもいいんじゃない? ということに。

そりゃ自分を好きになれた方がいいはいいでしょう。でも、それが容易くない人が無理に頑張っても、しんどくなるだけ。

だったら自分のことはさして好きにはなれないと見切りをつけ、自分より大切な存在ができたことに感謝する人生というのも悪くない気がするのです。

誰かの人生にのっかかっていると言われたらそれまで。依存していると指摘されたらぐうの音も出ません。

でも、そのことをちゃんと自覚した上で、バランスさえ間違わなければ、それも一つの生き方なのかなと。愛されるよりも愛したい真剣(マジ)で。その愛の対象が、僕は推しだったということ。

そして、そうやって推しに全力で愛を注いだお釣りがちょこっと自分に返ってきて、少しぐらいは自分のことも悪くないなと思えたら。こんな僕でも、それなりに良かったと言える人生なのではないでしょうか。

僕の場合、推しは若手俳優でしたが、その対象は人それぞれ。電車や車が推しの方もいれば、漫画やアニメのキャラクターが推しの方もいるでしょう。

何を推すかもまた、その人らしさが見える目安。まだまだ不安の多いご時世ですが、そんな暗い日々を照らす一番星が、推しなのです。

書籍紹介

『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』

推しとは何か 横川良明

思わず「わかりみが深い」とうなずいてしまうオタクあるあるから、今これだけ多くの人が「推し」を求める時代背景の考察まで、「推し」に関するあらゆることを凝縮! 推しがいるすべての人に贈る、笑って、うなずいて、考えて、ちょっと胸が熱くなる1冊です。

【執筆者プロフィール】
横川良明(よこがわ・よしあき)
1983年生まれ。大阪府出身。番組制作会社のAD、求人広告の営業を経て、2011年よりフリーランスのライターとして独立。現在、ドラマ、演劇、映画を中心に多数のインタビューやコラムを手掛けている
Twitter:@fudge_2002

 

提供・働く女のワーク&ライフマガジン『Woman type』(長く仕事を続けたい女性に役立つ、キャリア・働き方・生き方の知恵を発信中)

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