公正証書を作成する方法と手順

公正証書の作成は、次のように進めます。

ステップ1:夫婦間で話し合いを持ち、離婚に関する合意・取り決めをする。
ステップ2:合意事項をまとめる。(公正証書の原案となるもの。「離婚協議書」としてまとめても)
ステップ3:公証役場に夫婦で赴き、内容を法律的にチェックしてもらい、公正証書を作成してもらう。

離婚に関する公正証書を作成する時には、本人確認書類と印鑑、戸籍謄本、合意内容に関係する書類などが必要です。証書の扱う法律行為ごとに、手数料も決まっています。必要書類やトータルの費用は、依頼する公証役場に問い合わせるなどして確認しておきましょう。

また、公証人は合意事項の内容には関与しません。公証人がチェックするのは、条項が法令に違反していたり無効だったり、取り消しうる法律行為だったりしないかどうかという点です。

たとえば、養育費の額の算定や妥当性の判断は、公証人の職務ではありません。一方、合意内容に「養育費は支払わない」「親権者が再婚した場合は支払いを止める」などの事項が含まれているような場合、養育費は子供の権利であり親が勝手に放棄することはできないので、「法的に問題がある」という判断がなされる可能性はあります。

大切なのは、文言の一字一句に不備のない原案を作ることではありません。当事者同士の合意をしっかりしておき、その上で法的に確実な形を与えてもらいましょう。

協議離婚の落とし穴

(写真=fizkes/Shutterstock.com)

養育費不払いの最大理由は「もともと取り決めをしなかった」

現状、養育費の支払いを受けているひとり親は、母子家庭で26.1%、父子家庭で3.3%しかいません。(厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」2016年)

母子家庭、協議離婚のケースに絞って、もう少し詳しく見てみましょう。母子家庭で、離婚してから一度も養育費を受けたことのない母親の割合は、全離婚の53.4%に上ります。そのうち協議離婚のケースだと、59.0%にまでアップします。

協議離婚で養育費の取り決めをそもそもしなかったケースも、不払いと同じく59.0%。つまり、協議離婚をする際養育費の取り決めをしないと、ほぼ確実に養育費は支払われないということです。

二人で話し合いをするのが危険なケースも

協議離婚をする際、取り決めは二人の話し合いに委ねられるので、そもそも話し合いが成り立たない場合は進めるのが非常に困難です。

最も危ないのは、相手が暴力を振るう可能性がある時。最悪の場合は命を落としかねませんし、そのような対等でない関係性では、公平な合意は望めないでしょう。このような場合は、迷わず調停を選ぶべきです。

また、条件交渉の前に二人で話をする必要があったとしても、第三者の目の届かない場所での話し合いはおすすめしません。基本的に自宅は一番の密室です。実家の一室を使い親やきょうだいに別室に控えてもらうなどすることで、相手の暴力の抑止になります。いざという時に助けを求めやすい場所を選ぶことが大切です。