協議離婚の進め方・話し合うべきポイント

(写真=Bacho/Shutterstock.com)

離婚の際に話し合うべき事項は、協議離婚でも裁判所を介する離婚でも、変わりがありません。まとめると次のようになります。

金銭の清算に関すること:財産分与・婚姻費用・年金分割・慰謝料

「財産分与」とは、離婚に際して婚姻中に作った夫婦の共有財産を分け合うことです。結婚中の財産は二人が協力して作った共有財産と考え、夫婦に収入差があっても名義が一方のものでも、等分するのが原則です。負債など負の財産も、分与の対象です。ただし、結婚前に得た財産や一方への相続・贈与などは一方の特有財産と考え、分与の対象にはなりません。

そのほか、別居期間などがあればその間の生活費を分担する「婚姻費用」の清算、厚生年金などで一方が被扶養者になっていた場合は年金算定の基準になる標準報酬を按分する「年金分割」なども、話し合うべき事項です。

「慰謝料」は離婚で必ず発生するものではなく、離婚原因を作った方がもう一方に対し支払う、一種の「不法行為に基づく損害賠償」です。私見ですが、当事者同士の話し合いで破綻原因と賠償額を決めるのは、難しいように思います。

子供に関すること:親権・養育費・面会交流

子供がいる場合、夫婦は共同で親権を持ちますが、離婚すると一方が単独で持つこととなるので、親権者をどちらにするかを決めなければなりません。親権のうち子供を引き取り育てる権利を特に「監護権」といい、親権者と監護者は一致させることが原則です。

未成年の子供が生活するために必要な費用を「養育費」といい、親は子供に対して扶養義務を負っているので、養育費を負担する義務があります。勘違いされやすいですが、これは同居親に対する義務ではなく、子供に対する義務です。子供から親に直接請求することもできる性質のものです。

監護者とならなかった親が子供と会ったり電話やメールなどで交流を持ったりすることを「面会交流」といいます。

これら離婚後の親の義務や子供の権利に関する事項は、話し合って取り決めしておかなければなりません。

合意した事項は公正証書を作ろう

(写真= Freeograph/Shutterstock.com)

前項のポイントについて話し合い合意ができたら、その合意事項を公正証書にしておきましょう。協議離婚で決めたことは、いわば「当事者同士の約束ごと」。もしも一方がそれを守らなかったとしたら、信義にもとる行為ではありますが、法的に対処することはできません。効力のある文書を作って初めて、その約束事が法に守られることになるのです。

公正証書の効力

公正証書は、公証人という専門職が作成する公文書です。その役目は、争いが起こった後に解決を図る裁判所とは異なり、争いが起こるのを事前に予防するというところにあります。公正証書が持つ効力は、次のようなものです。

①当事者の意思によるものだということを保証する
公証人は中立・公正な第三者であり、権限を有する法律の専門家です。そのため公正証書は、勝手に作られたのではなく当事者の意思に基づいて作成されたものであるという強い推定が働きます。

法律上の「推定」とは、「そうではない」ということを証明しない限り否定されないということ。つまり、一方が後から「そんな約束はしなかった」「その約束は無効だ」と言い出しても、それを証明しない限り揺るがないということです。

②金銭債務の執行力を持つ
公正証書の中で金銭のやり取りが約束されている時、これについて「強制執行に応じる」旨も記載されていれば、もし支払いがなかった場合、裁判所に訴えて判決を待つことなく直ちに金銭の回収をすることができる効力を持つ文書となります。これを「執行力を有する」といいます。

執行力を有する公正証書を特に「執行証書」といいます。公正証書が自動的に執行力を持つわけではないので、必要な場合は「強制執行認諾」の条項を加えておきましょう。