4、イベント・ドリブン

イベント・ドリブンは、企業のM&Aなどのイベントが起きる際に株価のミスプライスを収益機会にする戦略だ。例えばあるM&A案件が公になり両社の株価が大きく動いた場合、それが実際に成立したときに合併比率の理論値に収斂するとみて売り買いの両ポジションを取る。直近では日産が筆頭株主になるとして三菱自動車の株価が高騰したが、これを大きな投資チャンスとして狙うということだ。

5、フィックスト・インカム

フィックスト・インカムは、ヘッジファンド戦略のひとつであるアービトラージ(裁定取引)の一種で金利系の資産に特化する。債券や金利先物で利幅が乖離する割高な銘柄を売り、割安なものを買う。

ただ、市場では常にこのような裁定が働くのでその乖離は非常に小さく、すぐ解消に向かうため利幅は限られる。株式の場合は、米アップル社のように複数市場に上場する企業や、日本株なら米国の同銘柄ADR(米国預託証書)との間でアービトラージをかけられる。

6、グローバル・マクロ

グローバル・マクロは単にマクロとも呼ばれ、世界経済の見通しを基に世界中で株式やコモディティーなど多様な現物・先物のポジションを取る。ただ、見通しが狂うと大きな損失が生じるなど、必ずしもヘッジが効いているわけでなく、投資分散のための選択肢のひとつという位置づけ。米著名投資家ジョージ・ソロス氏のクオンタム・ファンドが有名だ。

7、レラティブ・バリュー

レラティブ・バリューは、株式と転換社債など似通った金融商品で、割高・割安なものを売買する点でアービトラージと似ているが、後者がミスプライスに注目するのに対し、レラティブは価格がいずれ収束するとの考えに立っている。したがって市場全体が大きく変動する局面で利益を上げるのは難しい。

8、ディストレス戦略

最後に、ディストレス戦略は、破産した、あるいは、しそうな企業や国の株式、不動産などの資産、債券を極端に安く買い、その後の収支改善や再生ファンド介入などで価格が回復したときに利益を得る。アルゼンチンのデフォルトやギリシャ危機などの際に国債を大量に買い集め、その後の和解で多額の利益を得たことで知られている。

機関投資家はリターンよりもリスク分散を重視

過去2年間のヘッジファンド全体の加重平均リターンは、14年が4.5%、15年が-0.1%と、例えばTOPIX(東証株価指数)のそれぞれ15.9%と1.2%に比べると分が悪い。それでも世界の運用残高は08年末のボトム1.4兆ドルから昨年末には2.5兆ドルと2倍近くに増えている(数値はいずれも専門調査会社HFR調べ)。これはリーマン・ショックが起きた08年に下落幅が株式の約半分にとどまるなど、ヘッジファンドが市場のパニック時でもリスク分散効果を実証したことで年金などの機関投資家の保有高が増えているためだ。

同ファンドを巡っては、98年に10兆円規模のLTCM社が破綻し、08年は元ナスダック会長による大規模詐欺事件が起きるなど、一般には投機的、ハイリスクと思われているがそうでないものは多い。個人投資家にとってハードルは依然として高いが、その手法は参考になるだろう。

文・上杉光(シニアアナリスト)/ZUU online

【こちらの記事もおすすめ】
1万円から始められる投資って?
リスク許容度がわかる10のチェックリスト
「おつり投資」「ポイント投資」って?
楽ちん「投信つみたて」とは?
投資のはじめの第一歩