DVを受けたという事実を受容するまでのストーリー

(写真=Billion Photos/Shutterstock.com)

DVは親密な関係性の中で起こる暴力なので、一般的な暴力や傷害とは同一に語れない側面があります。被害者のストーリーを丹念に聞き取った調査『ドメスティック・バイオレンス被害者が被害を受けていくプロセスの検討』(米田弘枝、立正大学臨床心理学研究、2014年)からその特殊性を読み取ってみましょう。

DVが始まるきっかけは「関係性の変化」

この調査は、4名の協力を得て聞き取りをしています。そこから、DVが始まった当初のエピソードを抜き出してみましょう。

事例A:原因不明の不機嫌と無視。1週間程度継続し、月1~2回起こる。妻の退職後回数が増加、些細なことでスイッチが入ったように怒り出し、物に当たり壁に穴をあける。
事例B:結婚前に突然キレて激怒。このときすでに妊娠中。新婚旅行に行くときから、意味不明に再三怒鳴ったり、一晩中説教したりする。その都度謝る。
事例C:結婚式の前日。何かが気に食わなかったようにものすごく怒鳴る。
事例D:仕事を無理に辞めさせられ結婚。携帯で1時間に1回は行動チェック、監視、友人との交流を制限。理詰めで説教。

きっかけは結婚の直前や直後、妻が仕事を辞めたときなど、関係性が変わるときです。結婚を取りやめることが難しく、妊娠・失職など離婚の決断もしにくいタイミングと言えるでしょう。このときの妻の気持ちは、驚きや混乱、恐怖、緊迫感などです。

気持ちの経過と限界を感じるとき

その後暴力はエスカレートしますが、妻には「離婚は想像の範疇外」「親に心配をかけたくない」という気持ちや、「夫を信じ、正常化したい」「努力すれば何とかなるのではないか」などの期待や願望があり、むしろ夫と関わり、気を遣い、良い妻になろうと努力する方向に向かいます。

しかし、積み重なった恐怖心や不安感が否定できなくなり、動悸や震えなどの身体症状が始まったときや、夫の異常さや自分の努力の無意味さに気づいたとき、限界という結論に達するのです。ただし、そこに至るまでに短くて3年、長くて36年の年月が経過しています。

受容までの長さとDVの特殊性

DV被害者が決断し切れない大きな要因として、暴力の経過の特殊性が挙げられます。DVには緊張の高まる「緊張期」、暴力の起こる「爆発期」、一転して優しくなる「ハネムーン期」というサイクルがあり、ハネムーン期に見せる謝罪と愛情のため被害者がほだされてしまう、というものです。

それも大きいのでしょうが、筆者が感じることは「100%真っ黒のDVはそうそうない」ということです。「DVチェックリスト」を目にしたことのある人は多いと思いますが、項目にすべて当てはまる人はそういないでしょうし、60%以上当てはまったらDV確定のような単純な話でもありません。緊張期、爆発期、ハネムーン期がきれいに分かれる訳でもありません。

筆者の実感は「日常的まだらDV」で、グレーの濃淡が度合いを変化させつつ同一人物の中に同居するようなイメージです。チェックリストや相談機関は判断の助けになりますが、結局は自分で相手を判断し決断するしかない。そこが難しいのだと、つくづく思います。

誰だって人を見る目はそんなにない

(写真=Dmytro Buianskyi/Shutterstock.com)

あなたが婚活して出会った人と、半年後には結婚が具体化してきたとしましょう。実際、筆者は婚活して半年後には結婚を決め、1年後には結婚していました。しかし、結婚目前のあなたのその判断、自分で信用できますか?

言いたいのは、「だから人を見る目を磨こう!」ということではありません。そもそも、私たちはそんなに人間洞察力はありませんし、すべての人間関係は自分と相手との相互作用だからです。

だからこそ筆者は、「関係を見極めるための時間的余裕」を持ってほしいと思います。筆者の場合、その期間は「3年」です。どちらが原因かは分かりませんが、関係性に変化が生じ始めるのがどうも出会ってから3年目のようです(最近やっと気づいたことですが)。あなたの場合はどうですか?

結婚はゴールではありませんし、ゴールインまでの速さを競うものでもありません。結婚してからが長いのですし、結婚した先に幸せであることが大事です。あなたのペースで、必要な時間をかけて、進んでいってほしいと思います。

文・菊池とおこ/DAILY ANDS

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