『ライフシフト』が説く新しい人生シナリオ

(写真=lassedesignen/Shutterstock.com)

実際のデータを見ると、人生100年時代もあながち遠い世界のことではないと実感しますよね。『ライフシフト』では、年代の違う3人の架空の人物を登場させ、人生シナリオのモデルを示しています。舞台はアメリカですが、人生スケールや社会状況の変化は日本とも共通するので、見てみましょう。

ジャック(1945年生まれ)の3.0シナリオ

この世代は平均寿命が70歳前後。教育を受けるステージ、仕事のステージ、そして引退という3ステージ型の人生がもっともうまく機能した世代です。

ジャックは20歳で大学を卒業。エンジニアとして成功を収め、結婚生活では主たる稼ぎ手となり家庭を妻に任せ、62歳で仕事を引退、70歳でこの世を去ります。

彼の人生でこのステージ構成が良好に機能したのは、まず老後の生活資金として政府の公的年金、勤務先の企業年金、個人の蓄えが十分存在していたこと。そして老後の期間が8年間と比較的短かくその資金で足りたことです。

ジミー(1971年生まれ)の3.5シナリオと4.0シナリオ

ジミー世代の平均寿命は85歳。21歳で大学を卒業して職業人生に入り、65歳での引退を考えていますが、ジャックと同じような3ステージ型の人生を想定すると難航が予想されます。それは、企業年金の変革と削減が進んでいるため、ジミーはその受け取りが望めないこと、そして65歳で引退すると老後期間が20年間続くことです。ジャックと同じやり方だと、老後資金の備えが困難なのです。

これに対処するには、次の2つの方法が考えられます。

1つは、3ステージに「0.5ステージ」を付け加える3.5シナリオ。引退後にささやかな収入の手段を見つけるものです。

もう1つは、より大きなリスクと変化を取りにいく4.0シナリオ。45歳から自分を「再創造」するために、スキル向上や人的ネットワークの拡大などに時間とお金を投資します。家庭での夫婦の関係と役割にも向き合い、お互いに納得のいく態勢とルールを再構築していきます。

その結果ジミーは、より価値の高いスキルで仕事を獲得し継続する、もしくは起業し経営者となり、後々まで現役人生を続けることができるようになります。

ジェーン(1998年生まれ)の4.0シナリオと5.0シナリオ

ジェーンは1998年生まれ、ちょうど2018年の新成人と同世代です。この世代は100歳を越えて生きる可能性が高く、3ステージの人生は成り立ちません。

65歳で引退しても老後期間は35年。公的年金・企業年金ともに先行きが分かりませんし、貯蓄を達成するのも不可能。親世代であるジミー世代も子供に財産を残せない可能性が高い。そして、35年もの長い老後を無為に過ごすことも現実的ではありません。

ジェーンがサバイブするには、ジミーの4.0シナリオ以上に自分の再創造に投資を振り向ける必要があります。そのためには、再創造に時間を配分する余裕がある働き方も、強力な選択肢として視野に入ってきます。

ジェーンには、より変化を遂げる回数の多い5.0ステージの人生もあり得ます。

大学卒業後、キャリアを固定せず流動的に働き、幅広い人的ネットワークや自分の強みを獲得します。その後企業に参画しキャリアと成功を築きますが、引退までに2度の学び直しと移行期間を設けてキャリアチェンジ。晩年は一箇所に限定せず、自分の能力を多角的に生かす活動をします。そして、完全に引退するのは、85歳の時です。