ICTツールが最も効力を発揮するのは記憶する行為
竹内:一方で記憶の「定着」に関しては、AI学習に頼った方が効率的だといわれています。
編集部:それはなぜでしょうか?
竹内:覚えるという方法はいくつかありますが、2011年の研究データによると、「問題を解くこと」が最も長期記憶化させやすいという結果が出ています。つまり、目の前の問題を解答するなかで「思い出す」という行為をさせ続け、記憶を定着させるということです。そのためお子さまにそろそろ漢字を覚えてほしいと思った時には写させるよりも読ませるよりも解かせた方が覚えやすいのです。
編集部:ということは、AI学習において繰り返し問題を解き続けるという学習スタイルは記憶定着において有効的ということですね。
竹内:はい、そうですね。そもそも問題を解くのも採点をするのも機械の方がやはり速いため、AI学習の方がより効率的に勉強を進められるというメリットがあります。特に採点に関しては機械に任せた方が精度も高いですよね。
さらに漢字の採点時に書き順を確認したい場合も、人間であれば横で見ている必要があるけれど、ICTツールを活用していればあとから追って確認することもできます。
編集部:曖昧さを許さず、厳密さにこだわるAIの長所が生かされていますね。
竹内:正答率も明確に見える化されるため、その子の苦手を把握しやすいのもAI学習のメリットです。人間にはそれぞれの子どもの苦手を完璧に覚えておくことは不可能ですから。そういった意味でも速く解かせてあげられて、速く丸つけをしてあげられて、適切なタイミングで解かせることができるのは機械ならではの長所です。よって、「解く」という行為が記憶定着上重要だとすると、その点は機械の方が優れているということです。
編集部:受験対策などで何かを覚えるという行為に限ってはまさにAI学習が最適ということにつながりますね。
竹内:はい。これは私がリクルートで「スタディサプリ」の立ち上げに携わっていた際に感じていたことですが、たとえば同じクラスで同じ授業を受けた場合でも、人によって成績は違いますよね? 差がついてしまったり。
なぜかというと、英語の科目の場合、文法は先生が教えてくれますが、英単語を覚える授業はありません。英単語は受験においてとても重要な要素であるにも関わらず、生徒に任せられている状態です。
編集部:確かにそれぞれがそれぞれのやり方で単語を覚えていますね。ということは、AI学習と相性のよい「覚える」という行為は、授業でも明確な学習指導がないぶん、デジタルツールに任せた方が効率的ということですね。
竹内:はい。記憶の定着にICTツールを活用すれば成績向上を期待できるということです。しかし「理解」と「活用」に無理にICTツールを使おうとすれば失敗します。要するにICTツールが学習プロセスの全てにおいて万能というわけではなく、それぞれの学習プロセスに適したツールの選択が重要ということですね。
編集部:なるほど! 貴重なお話をありがとうございます。
後編に続きます。
何事にも長所・短所があるように、デジタル学習においてもデメリットがあることを明確にお話してくださった竹内さん。やはり親にとってはICTツールによって本当に理解できるのか、視力の低下も心配していたため、長所を生かした使い方を知ることは非常に重要なことだと思いました。さらに記憶学習はAIと相性がよいことを示してくれたことで、学習プロセスのどのポイントをデジタルツールに切り替えるべきか、明確化することができたように感じます。何事も使いようが肝心ということで、使い方を間違えれば害になることもあれば、正しい使い方によってそのモノが持つ力を最大限に発揮してくれるのだと思いました。
竹内孝太朗さんプロフィール
名古屋大学経済学部卒。2010年に株式会社リクルートに入社。2013年から「スタディサプリ」にて高校向けサービスの立ち上げに従事。全国の高校1,000校を行脚し、学習到達度測定テスト、オンラインコーチングサービスの開発を行う。2016年に代表取締役CTOの畔柳とモノグサ株式会社を共同創業。学習プラットフォーム「Monoxer(モノグサ)」の開発と運営を手掛ける。現在、塾や学校を中心に全国3,000教室以上にて活用されている。プライベートでは3児の父であり、休日は子どもと一緒に「Monoxer」で勉強をしている。
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